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◆第五軍における愛玩用動物のクリーニングについて (スティール視点)

仕事で第五軍の本舎に行ったら、猫がいた。
全体的にグレーなんだけど、白に近い上品なグレーだし、艶々の毛並みのおかげで汚くは見えない。
極めつきは首輪だろう。革の土台に銀糸で刺繍が施されており、宝石のようなものが埋め込まれている。何処の貴族の飼い猫さまだという感じだ。

その猫は俺に気づくと近づいてきた。

似ている。けどまさかな。けどもしかして。
頭を撫でてやり、首輪を確認すると銀糸で「モップ」と縫い取られていた。
マジで!?マジでお前モップ!?どうしたんだ、その磨かれようは!

シード様に聞いてみると、シード様は元々第一軍の猫だとご存じなかったらしい。ちょっと驚かれた。
そして第一軍の猫を酷い目にあわせて申し訳ないと謝罪を受けた。シード様のせいじゃないのに丁寧な方だな、なんだか好感がもてる。

「いや、染め粉を自力では落とせなくてな。アルディンに頼んだんだ。元々あいつに貰った髪粉だったんでな」

アルディンにモップを預けたところ、三日後に戻ってきたらしい。そのときにはあの状態だったのだという。

「アルディンに聞いたが、家人に頼んだとしか説明が貰えなくてよ。ヤツも知らねえようだ。どうも脱色されたあげくに何か使われたみてえなんだが、よくわからねえ。俺も驚いたんだ。…まぁ金持ちのすることだし、あの猫も元気だから害のあるもんじゃねえんだろうから許してくれ」

いや、俺はかまいませんが。
シード様は第一軍の猫ならアルディンに説明して許可を貰った後、ちゃんと送り届けるからと言われた。
どうやらモップは近日中に戻ってこれそうだ。

<END>

第五軍ではアルディン将軍の飼い猫と思われていた模様。
アルディン自身は猫に興味がありません。

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