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◆シードの見合い話 その11 (ベルクートの友人視点)


見合いの翌日、酒場で昼飯を食ってたらベルクートがやってきた。
いつも、見合いの翌日はこの世の終わりってぐらい落ち込んでるっつーのに、満面の笑顔だ。こりゃもしかして…。

「やったぞ!!見合い成功した!!」

ええ!?マジかよっ!?とうとう25回目にして成功か!?

「どんなオヤジだったんだ!?」
「山のような大男か!?」
「還暦前のオヤジか!?」

こら、悪友共、そこを聞くんじゃねえ。知りたくねえぞ、俺はっ。
何しろ、ベルクートの妻になってくださる方なんだぞ。ベルクートの奥方がジジイでいいってのか?
いずれ知らなきゃいけねえにしても、後回しにしたいだろ、嫌なことは。

「オヤジどころか、素晴らしい方だったぞ!」
「え?マジで?」
「俺はろくに受け答えもできない有様だったというのに嫌な顔一つせず、退屈であっただろう時間、席を立たれることなく最後までずっと付き合ってくださり、あげくに俺の情けないプロポーズにこちらこそと頷いてくださったんだ!」

ベルクートは相手の方にべた惚れのようだ。
不安だ。盛大に不安だ。
確かにいい方のようだが、ベルクートの説明じゃ相手がどんな方なのか微妙に判らないじゃねえか。
だが近衛副将軍ってのなら、相当なエリートだ。少なくともベルクートの地位狙いでの結婚じゃねえよな。ちゃんとベルクートへ好意を持ってくださってOKされたんだろう。
……で、はげた中年のオヤジだったのか?そこのところ、詳しく教えろよ。
しかしベルクートは舞い上がっていて返事が返事になっていない。
とんでもない素晴らしい方だと繰り返す。
だから素晴らしいオヤジなのか若いのか教えろっての。駄目だこりゃ。
同じ事を考えたのかあきらめ顔で悪友が呟く。

「…せめてジジイとか不細工なおっさんじゃねえことを祈っておくか」

ああ、全くだ。

<END>