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◆シードの見合い話 その7 (ニルオス視点)


シード副将軍が見合いをしたらしい。
その情報が入ってきたのは見合いをしたという半年後のことだ。
情報収集に長けた我が第二軍とも思えねえ遅さだ。こりゃちょっと気を引き締めねえといけねえな。どうでもいい情報ではあるが、普段の油断がいざってときの失敗を招くってもんだ。
とりあえずアルディンに探りを入れてみると、そうだとあっさり肯定の返事が返ってきた。
相手は港町ギランガの頭領だという。へえ、国内最大の港町の後継者か。こりゃあれだな。しっかり者を宛がって代替わりに備え、ついでに警備強化を図り、強いては海軍への牽制を意味しているに違いねえ。ミスティア家と海軍は代々不仲だからな。
…ってことはミスティア家の方は…などと考えを巡らせていると、今、文通をしているようだとアルディンが言った。

聞き間違いか?
いや、マジか?何だって?文通?

「何しろ遠距離だからな。ベルクートは口べたなところがあるからちょうどいいだろう」

いやいや、見合いしたんだろ?結婚前提なんだろうが。それでなんで文通から始まるんだ?ありえねえだろ。
いい大人だろうが、ガキじゃあるまいし文通ってのはあんまりだろ。デートの一つもしてねえのかよ?

「遠距離だからそうマメに会えないようだが、この間、一緒にカフェに行ったと行っていたぞ」

カフェ?カフェって軽食屋ってことで間違いねえのか?

「それ以外にどんなカフェがあるんだ?なかなかコーヒーが美味しかったらしいぞ」

いやいや、大人同士で会ったんだろ?しかも見合いして半年経ったんだろ?泊まりじゃなかったのか?

「やっと相手の誕生日が判ったと言ってたな」

なんだそりゃ!?ガキのままごとじゃあるまいし、誕生日云々なんかどーでもいいだろ?
いや、むしろ、マジでそんな付き合い方してるのか?こりゃ俺をはめようとしてるんじゃねえだろうな?アルディンだからそんな器用なことはできねえとは思うが。

思わず深読みしているとお前もたまには文ぐらい送れとアルディンに言われた。
ちょっと待て!お前、俺と文通したいのか!?
同じ王都暮らしで同じ地位につく同僚だってのに何で文なんか書かなきゃいけねえんだ。時間と紙の無駄じゃねえか。非効率的すぎる。多忙な職だってのにそんなかったるいことやってられるか!

…しかし、シード副将軍の件はあまりにもあり得なさすぎて気になるな。
一応調べておくか。

<END>

信じられなくて無駄な調査をするニルオス。のちに真実と知り、唖然とします。
情報収集に長けた第二軍だけあり、シードの見合いがらみの情報を入手したスピードはトップの早さを誇ります。(半年後ではあるが、一応最速)
ちなみにニルオスは、アルディンにシードが少し羨ましいというような発言をされ、上流階級ってのは理解できねえとシードの件を放置します。