アルディンに布袋を差し出された。
それもただの布袋じゃねえ。艶のある上質な布で全面に刺繍が施されているっつー、やたら豪奢な布袋だ。
聞けばミスティア家から俺宛に送られてきたらしい。
何なんだと思いつつ受け取るとやたら重い。開けてみると宝石が詰まっていた。しかも原石じゃねえ。研磨済みだ。一体幾ら分の価値があるんだか。考えただけで目眩がする!
「なんなんだ、こいつは!」
「交際用資金らしいぞ」
はぁ!?こんな大金使ってどういう交際をしろってんだ。
そもそも交際用資金なんざ、何で貰わなきゃいけねえんだ。俺はそんなに貧乏に見えるのか!?一応副将軍だぞ、軍の幹部だぞ!?世間一般レベルじゃ高収入だっての!
「シード、それは判っている。収入を心配して送ってきたわけではないだろう」
そうかよ。だったら何でだよ。
「我が弟コウからの手紙では金の心配はしていないが、何かあったとき力になるのは金だから持っていてもらえるとありがたいとのことだ。ミスティア家は大貴族だ。シードの身を心配して送ってきたんだろう。ミスティア家からの好意によるものだから受け取ってくれるとありがたい」
なるほどな。大貴族の事情ってヤツか。そう言われりゃ断りにくいな。貰っとくか。
「無くなったら言ってくれ。それは一応今年分だが、追加出来るそうだからな」
ちょっと待て!!なんだ、その今年分ってのは。来年分があるってのか!?
「当然だろう。交際用資金だぞ。使えば減るものだ」
だからそんな大金使うような交際はしないっての!!一体どういう金銭感覚なんだ、貴族ってのは。めちゃくちゃ不安になってきたぞ、俺はっ。
<END>
結局使用されることがないまま、タンスの肥やしになります。