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◆シードの見合い話 その4 (次期ミスティア領主コウ視点)


見合いを用意したコウは執事の報告を受け、二番目の兄リドに伝えた。
元々ベルクートはリドと仲がいい。当初、見合いも兄が用意していたのだ。
しかし、破談の連続。さすがの兄も十人目を越えた辺りから嫌になっていたらしく、十五人目を越えたところから匙を投げた。
一応兄に頼まれていたコウはいい相手が見つかったら紹介する、という程度に兄からの頼みを聞いていた。
実のところ、コウ自身、見合いが成功するとは思っていなかった。

「見合い成功!?本当かっ!?それはよかった。いいかげん、諦めかけていたところだぞ」

素直な兄は素直に喜んだ。
しかし喜ぶのも無理はないだろう。幾ら何でも二十回以上の見合い破談は酷すぎる。

「男だから妾は必要になると思うがいいのか?」
「かまわん!あいつの妻になってくれるというだけで大歓迎だ」

(やれやれ。リドはよほど手を焼いていたと見える)

ベルクートは港町ギランガの頭領となるべき男だ。ギランガは大国ウェリスタで最大の港町。コウが将来支配するミスティア領の中でも重要な拠点の一つだ。
当然ながらその影響力は大きい。

(だがシードなら大丈夫だろう。近衛副将軍にまでなった男だ)

下手な女性を宛がうよりずっと安心できるとコウは思った。
ちゃんと長兄の補佐もしてくれていたし、少し話しただけだがかなりのしっかり者だった。さすがに約一万人の中のトップ2になっただけある。
それにしても何気なく話を持ちかけただけだが、成功するとは思わなかった。思わぬ拾い物をした気分になったコウである。もっとも上手く婚姻にまで結びつくとは限らないが。

(だが重要なのはベルクートを補佐する正妻だ。子は適当に妾を選んで産ませればいい。いざとなれば親族から出来の良い子を養子に回すこともできる)

それにしても、とコウは思った。
ベルクートは顔もいい。仕事もできる。血筋も身分も問題なし。
後は初対面の人とも普通に喋ることさえ出来れば、文句なしだったろうに、と思うコウであった。


<END>

当人以上に周囲が心配し、迷惑していたというお話。
見合い自体はリド以外も紹介していたので、シードは25回目ぐらいの見合い相手です。