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◆シードの見合い話 その2(シード視点)


見合い相手に会った。
褐色の髪に青い目、年齢は俺より少し下か?すっきりした容貌のいい男だ。
あらかじめ教えられてたプロフィールによるとアルディンの従兄弟に当たるらしい。名をベルクートと名乗った。
俺たちを引き合わせたミスティア家の執事が『後は若い方お二人で…』と決まり文句を言って出ていくと二人きりになった。
しかし、何というか、がっちがちに緊張しているのが分かりまくりだな。相手が俺なんだから緊張なんかする必要ねえってのによ。
趣味だの普段の仕事だの、取り留めのないことを話しかけてみたが、緊張しすぎている相手からはろくな返事がこねえ。なんだかな………話が続かねえじゃねえか。
どうしたものかと思いつつ、すっかり冷めたコーヒーをすすっていると、ノック音がして、見知らぬ初老の男が入ってきた。どうやら緊急の用だったらしく、断りの言葉を告げるとベルクートに書類を差し出して説明をしている。ありゃ海図ってヤツか?
説明を受けるベルクートの目がスッと細まるとガラリと雰囲気が変わった。

「不要。妥協の必要はない、押し切れ。ゲゼムに遠慮する必要はない。商工会がなんと言おうとギランガの海はミスティアの海。奴らの好きにはさせん」

おお?なんだこの変わり様は。別人じゃねーか。さっきまでの緊張は何処に行ったんだか。
ちょっとびっくりしていると、初老の男が出ていった途端、ベルクートは固まっちまった。
何なんだ、二重人格か?

「あ、あの、シード、殿……」
「な、なんだ?」

つられて緊張しちまう。何を言われるんだか。

「お、俺は、その、仕事には強いんですが……」
「あ、ああ…」

そうみてえだな。さっきの様子を見ると。

「け、けして、貴方の事を嫌っていると、いうわけではなく…慣れるまで時間がかかりまして……いえ、本番には強いんですが…」
「そ、そうかよ…」

慣れるまでって一体どれぐらいかかるんだか。それに本番ってなんだ、本番って。

「す、末永くお願い致します」
「お、おう…こちらこそ」
「あ、ありがとうございますっ!!」

はっ!!思わず、返事しちまった!!これはあれか!?OKしたことになるのか!?


<END>

見合い話その2。思わぬ形で交際決定してしまうシード。
なりゆきでお見合い、なりゆきで交際スタート…。