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◆ある痴漢退治の話(5)


自室で枕を抱えてごろごろと転がる。
どうにも気分が重くて仕方がない。眠りたいのに頭が冴えてしまって眠れなかった。

「うーん……」
「性犯罪者への処遇など悩む必要がないと思うがな」
「え?どういうこと?」

枕元で羽根繕いをしている小竜は過去の事例がある、と答えた。

「過去の事例通りの刑を下せば、周囲からの大きな反論はないものだ」
「うーん……ちょっと安直すぎる気もするんだ」
「遙かな過去の事例もあるぞ。そもそも性犯罪者は性に関する罪を犯したわけだ」
「うん」
「ヤれなくなれば問題はないわけだ」
「え?」
「性機能を永久に奪うという、よき解決方法があってな」
「待って待ってドゥルーガ。何それ。前例なのか?それって」
「そうだ。遙かな過去の事例と言っただろうが。実際にある国で行われていた方法だ」

顔を引きつらせるスティールに対し、ドゥルーガは『焼き取ってしまうんだ』と何とも物騒な方法を教えてくれた。実に生々しい方法だ。

「うわぁ……」
「ま、実際はそんなことしなくても、緑の印を使って取ってしまえばいいだろう」
「いや、そうだけど、いや、その……ドゥルーガは性欲がないからあっさり言えるのかもしれないけどさぁ……」
「そうだな。そしてその性欲を若いお前達は持っているな」
「うん?」
「今日、お前があまりに暗い顔をしているから、ラーディンが声をかけそびれていたぞ」
「え?あ……あー!!今日、ラーディンと約束していた日だった!!」
「だろう?」
「覚えていたならもっと早く教えてくれよ、ドゥルーガっ」

もう夜半だ。訪ねるには遅すぎる。

「アホか。自分で覚えていろ」

忘れていたのはお前の責任だろうと言われ、スティールは落ち込んだ。全くもってその通りだ。

「ラーディンに悪いことしたなぁ。埋め合わせしないと…」

どうやって埋め合わせしようかと考えているうちに暗い気分は吹き飛んでいた。恋人とのやりとりを考えているだけで気分が浮き立つのだから、己は現金に出来ているらしい。

(うん、まぁいいか。また明日考えよう)

ようやくやってきた眠気に身を委ねるスティールであった。