文字サイズ

◆奉剣の舞(4)


ドゥルーガの指導を受けてぐったりとして寮に戻ったスティールは、その晩、ラーディンに押しかけられていた。
普段はラーディンの実家で遊ぶことが多い二人だが、寮で会うことがないわけではない。個室のスティールの部屋は二人きりになるのに都合が良い。士官学校から徒歩圏内なのも便利だ。

「なぁ、スティール」

ぐったりとベッドに横になるスティールの体にぴったりと体を寄り添わせ、くいくいっと服を引っ張るラーディンは、着替えを持参してきている。その意図は明らかだ。最初からそのつもりで部屋にやってきたのだろう。

「試験の練習で疲れてるんだよ」

今にも眠りに落ちそうなスティールは、ヤる気の欠片もない。ハッキリ言って勃つ自信もない。
しかし、ラーディンはすっかりその気のようだ。いつになくしつこい。

「もー、寝ろって」

スティールは手をラーディンの首筋に伸ばし、緑の印を動かして、力を奪った。

「うぁ、何するんだよ、スティール。卑怯だぞ」

体から生気を奪われてベッドに崩れ落ちたラーディンへ、スティールは眠たげに答えた。

「しつこいからだよ。俺、ヤる体力残ってないしさあ」
「一回だけ」
「だからしないって」
「触るだけもダメか?」

下肢に伸びてくる手を感じ、スティールは間近にある親友の顔を睨んだ。

「しつこい…!」
「………」

返答はなかった。しかし諦めたというより悩んでいるという様子だ。

「ドゥルーガ」
「しょうがねえな」

会話を聞いていたのだろう。小さな相方は一瞬にしてラーディンの手首を水で縛った。

「げ!!冷たっ!!」
「凍ってるわけじゃないから凍傷の心配はないよ」
「そういう問題じゃねえだろ、スティール。コレ、解けよ!」
「それやったの俺じゃなくてドゥルーガだから」
「お前が命じたんだろ」
「俺、寝る。おやすみ」
「待てよ、解けってスティール!」
「ドゥルーガ、よろしく…」
「ゲ、待てよ、ドゥルーガ。うわっ!ちょ!!」

どたばたと暴れる音が聞こえるが眠気が限界だったスティールはそのまま眠りに落ちていった。