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◆炎剣の使い手(4)

※性的表現があります。お気をつけください。


四ヶ月後、学校は秋休暇に入った。
秋は収穫の季節のため、どの地方も忙しい。そのため、夏期ではなく、秋に休暇が設けられているのである。
当然、休み初日から帰る気満々だったスティールだったがその予定は小竜にあっさり覆された。
「計画を実行するぞ」
「は!?」
いきなりの宣言にスティールは驚いた。
「長期休暇ってことは連休ってことだ。計画を実行するのにちょうどいい。特にカイザードにはこの辺でしっかりどっちが上かを示しておかねえと、舐められるぞ、スティール」
もう舐められてますとは言えず、曖昧に頷くスティールである。
「何故邂逅の儀が15歳で行われるか知っているか?体がしっかり大人の体になるまえに気を混ぜ合わせていた方が大人になったとき、相手のための体になれるからだ。だからといって大人になったら駄目ってわけじゃねえが、少々衝撃が刺激的すぎるんだな。…というわけでな、早ければ早いほうがいいわけだ」
「…へえ…」
「というわけだ、とっとと相手を呼んで来い」
「今からかよ!?だから何でお前が決めてるんだよっ!ドゥルーガ!」
強制的に決められ、がっくりと肩を落とすスティールだった。


「先輩、話があるんですが、部屋に来て頂いてもいいですか?」
そう運命の相手に告げられ、カイザードは深く疑問を感じなかった。相談かお茶でも飲ませてもらえるのか程度にしか考えなかった。そのため、そのまま相手の部屋へ向かった。
部屋に入った途端、手の痣を握られた。何か力を注ぎ込まれたと思った途端、体中の力が抜けた。かちゃりと鍵をかける音がする。部屋の鍵だろうか。

「な、なにを……」

何となく判る。緑の癒しの痣を持つ能力者が持つ力だ。癒やし手は傷を癒やすだけでなく、力を抜き取る能力も持つ。能力において癒しと破壊は背中合わせなのだ。
力の抜けた手足にぴちゃりとからみついてきた感触があった。驚いて見下ろすと紫色のゼリー状のものが足にからみついていた。驚いたことにその生き物はどんどん服を溶かしていく。

「な、なんだこいつはっ」
「すみません、騒がないでください」

バンダナで口を封じられ、カイザードは呻いた。暴れようとするが最初の術でうまく手足に力が入らない。服はどんどん溶かされていく。生き物は太ももから下腹部に登っていくため、カイザードの恥ずかしい部分は瞬く間に露わにされていた。ひやりとしたうごめく液体は愛撫するかのように性器周辺を包み込み、揉み込み始める。性的なことに耐性のないカイザードが息を荒上げ始めるのは早かった。それに気づいたスティールが封じた口を解く。

「はっ……ああっ…」

スライムの愛撫とスティールの手は的確に快楽を引き出していく。特にスティールの手は魔法の手のように触れたところから性感を引き出していく。弱い部分ばかりを触れていくのだ。一体どこで覚えたのか、動きに躊躇いはない。首筋、鎖骨、乳首、脇腹と的確に性感帯を刺激していく。スティールに触れられただけで耐えられないような快感が走る。初めてだというのにこの快感はなんなのか。それこそが運命の相手だからだろうか。これで慣れられたら一体どういう快楽を与えられるのか、考えるだけで恐ろしい。
指が最奥へ入り込む。電撃のような快楽が走り、カイザードが高い声を上げた。

「…ひっ…やぁっ…」

瞬間、達していたらしい。吹き出した精液が精液が腹部へこぼれ落ちる。
しかしスティールは達したカイザードに息を整える暇も与えず、指を増やしていく。内部を蹂躙される感触に慣れていないというのに違和感よりも性感の方が強く、カイザードは唇をかみしめた。まだよく知らぬ相手に体中を見られ、好きに触られている。屈辱と羞恥に目がくらむようだった。しかも年下の後輩はカイザードが大きく広げた両足の間にいるのだ!

「…あっ、…ああっ……やぁ、もぉっ…」

部屋に響く己の声にカイザードは声を止めようと思ったが、止まらなかった。
ひやりと冷たい柔らかなスライムは胸の飾りと脇腹を絶え間なく弄り続ける。それは疼くような性感を与えるが、決定打にならず、とにかくもどかしい。その間にも最奥は蹂躙され続け、カイザードは腰の動きを止めることができなかった。しかも高ぶっている性器には触れられていないのだ。にもかかわらず、ずっと先走りが零れ続けているのはカイザードが感じ入っていることを示していた。

「…先輩、欲しい?」
「…う……?」

内部を弄っていた指が突然引き抜かれた。スライムのもどかしい動きは止まっていない。しかし内部の圧迫感がいきなり失われ、体への決定打がなくなったかのようだった。

「先輩、腰が動いている。足りない?」

カッと羞恥に頬が染まる。意地で動きを止めたが、それによってスライムの動きが止まるわけではない。蹴り飛ばそうにも体中の力が入らず、視線を向けるのが精一杯だった。

「ね、ココに欲しい?」

つい、と指で最奥の入り口を突かれ、カイザードは怒りと羞恥に頬を染めた。しかし怒鳴ろうにも言葉が出てこない。ぱくぱくと口を動かし、カイザードは唇をかみしめた。言葉に示されたことで、自分が何を欲していたかに気づかされたのだ。
中途半端な愛撫ではもどかしくて達することができない。欲しいのは刺激だ。さきほどまで入っていた複数本の指よりも強くて熱いもの。それが欲しくてたまらない。何故そう思うのか、抱かれたこともないのにどうして欲しいなどと思うのか。それこそが運命の相手だからだろうか。運命の相手を抱いて、もしくは抱かれたら、他の相手などできないという。それほどの快楽を受けることができるという。
カイザードはごくりと息を呑んだ。欲しい。先ほどまで指で弄られていた場所がもどかしくて仕方がない。しかし言葉にするのがどうしても躊躇われた。相手は年下で後輩で、しかも目立たなくて噂一つ聞かなかったような相手なのだ。そんな相手に乞うことがカイザードの高いプライドを邪魔した。

「欲しくない?じゃあ…待とうかな。明日は休みだし…一晩中でもいいよ、俺は」

くいっと突き入れられた一本の指に思わず高い声を上げてしまい、カイザードは恥ずかしさに真っ赤になった。

「わ、指が食いちぎられそう。もっと緩めてくれないと俺、痛いんですけど。そんなに欲しいんですか?先輩」

カイザードは恥ずかしさに言葉が出なかった。慌てて力を抜こうとするが逆に力を込めてしまう。スティールに小さく笑われ、カイザードは死にたいほど恥ずかしかった。

「ねえ、先輩。先輩は俺のでしょ?もう運命で決まっちゃったんですから、仕方ないじゃないですか。俺にだけこの顔を見せてくれるんでしょ?色っぽくて綺麗な顔を」

確かにカイザードの相手はスティールだけだ。カイザードの持つ印は火だけなので、相手も一人。スティールだけなのだ。普通、印は一人に一つなので運命の相手も一人だけなのが普通なのだ。

「俺にだけだからいいでしょ?これからずっとするんだから、先輩の恥ずかしいところもたっぷりみるわけだし、今更だよ。俺にだけ、たくさん見せて」

スティールの言葉はカイザードの胸に響いたようだった。カイザードは力が入らぬ足をどうにか動かし、大きく足を広げた。互いの体液やスライムの粘液で下腹部から足にかけてはどろどろで壮絶な状態だった。カイザードも己の体位と体の状態に気づいたのだろう。羞恥に泣きそうな顔になりつつ、必死に言葉を紡いだ。

「……スティール……」
「うん。先輩、おねだりしてみせて」
「……す、てぃーる……俺の…ここ、に…」
「うん」
「ここ、に…スティールの…いれ、入れて…」

まぁ最初だからこんなものかな、とスティールは思った。それを口にするだけでもカイザードは恥ずかしくて必死な様子だったので、スティールは満足だった。

「あ、あつい……」
「うん…」
「溶ける……っ、あつい、……スティールっ」

互いの結合部から快楽を得ているのだろう。悲鳴のような嬌声をあげ、カイザードは必死にスティールにしがみついている。
(これが気の交わり…)
確かに目眩がするような快楽だ。運命の相手でなくばならないという理由が分かる気がする。印から広がった気が体を支配し、相手の気と交わって戻っていく。

「もっと……もっと、スティールっ」

感じ入っているカイザードは綺麗だった。容姿を噂される人物だけあり、泣き顔も壮絶な色艶がある。無駄のない引き締まった体は日に焼けていなくて白い。腕に見えるのは火の上級印。実力を噂されるだけあり立派なものだ。その印はスティールの印に酷似している。

「…っ、ああああっ……」

カイザードはスティールより早く達したらしい。そのことで一際強く締め付けを受け、スティールは小さく呻いた。そのまま突き上げていき、カイザードの奥に熱い飛沫をはき出す。

「あつ…い……気持ちいいっ……」

恍惚とした様子で呟くカイザードを抱きしめながら、ちょっとくせになりそうだな、と思うスティールだった。



翌日、目を覚ましたカイザードに、卑怯だ、次は俺に抱かせろと言われ、スティールは少し考えつつ答えた。
「いや、そう言われましても…たぶん、先輩無理ですよ」
だいいち、スティールを抱くなど、小竜が許してくれないだろう。どんな手を使ってでも阻止してくるに違いない。カイザードは火だ。小竜は火と水相手には絶対抱かれるなと念を押していた。
「はぁ!?どういう意味だ」
「…先輩、昨夜イッた時、全部後ろの刺激からだったんですが」
「!!!」
「大体、殆ど前は弄ってなかったのに他の場所からの刺激で感じまくってたし…」
「そ、そんな、でたらめをっ…」
反論するカイザードは真っ赤だ。しかしうろ覚えなのか全然覚えてないのか、強い反論はしてこない。
「覚えてないんですか?まぁどうしてもって言うなら、次にしてもいいですけど……」
約束だぞ、と念を押すカイザードだが、スティールはたぶん無理だろうなと思った。
きっと小竜が許してくれない。途中まではそういう展開になっても途中でひっくり返すことになるだろう、と。