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◆猫とネズミとレストラン〜ある事件裏の話〜

7.ハプニング


一人なら何とかなったかもしれない。捕まらなきゃいいだけだ。
けれど今はニルオス様と一緒だ。しかも狙われてるのは明らかにニルオス様なのだ。守りながら戦うというのは大変だ。それに俺はそんなに器用じゃない。成り行きの副将軍なのだ。
しかもここは王都。周囲には複数の建物が密集する治安の悪い一角。うっかり関係のない民間人を巻き込みでもしたらと思うと、大技も使えない。
ハッキリ言って、俺は大技以外自信がない。

「かまわん、派手にやれ。何があってももみ消してやる」

妙に自信たっぷりに言われる。そんなこと自信たっぷりに言われても、民間人は巻き込めませんってば!!
どうしようかと躊躇していると俺たちを取り囲んだ敵が襲いかかってきた。

「わわっ!!」
慌てて土の印で防御壁を築く。
俺たちを取り囲んだ反重力の壁に遮られ、敵は弾き飛ばされた。

「何やってやがる。そんなことをしたら攻撃もできねえだろうが」

舌打ちされつつ、突っ込まれる。
そうですけど、こんな狭い場所じゃ攻撃しようにもできないんですってば。
あぁ、何もないだだっ広い荒野が懐かしい。戦場じゃ周囲への被害を気にすることなく技を振るえたのにな。こんなことを考える日が来るなんて思ってもいなかった。
けれど防御に徹していてもきりがない。
どうしようかと悩んでいると、再び敵が襲いかかってきた。どうやら印を使える者がいたらしく、土の防御壁が震動する。防御壁は同種同士だと解除することができる。もっとも、この場合、より強い力を持った方が上となるのだけれど、今回は俺の力が勝ったらしい。

「面倒だな」

先に動いたのは躊躇う理由のないドゥルーガだった。小手状態から小竜状態になって瞬時に飛び出すと、雷雨を敵に浴びせる。

「うわっ!!!」
「何だ!?」

チャンスだ!
続いて俺が放った炎球が一気に敵を吹き飛ばし、向かい側の壁に当たった。
何しろ王都の密集地。道と道の間は10mもないのだ。
加減したつもりだったが、破壊力の方が上回っていたらしい。ぶち当たった炎は、派手な破壊音と共に民家の壁を思いきり破壊した。

「あ……!」

壁が破壊された家に人がいたらと思わず青ざめる。
ところが、土煙の中から現れたのは思いがけぬものだった。