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◆猫とネズミとレストラン〜ある事件裏の話〜

8.結末


翌日。寝不足の体を引きずって出勤した第一軍の執務室でフェルナンに迎えられた。

「猫探しに行って、ニセ銀貨の製造工場を発見したらしいね」

フェルナンの言葉に俺は力なく頷いた。
そう、壊した壁の中からざらざらと出てきたのは、山のようなニセの銀貨だったのだ。
そこはニセ銀貨作りのための工場だったらしい。
ニルオス様と俺を取り囲んだ奴等はニセ銀貨を製造していた一味で、その中に、第二軍将軍であるニルオス様の顔を知る者がいたらしい。
俺たちがアジト近くまで来たものだから、アジトが発見されたのかもしれないと焦って襲いかかってきたようだ。
ちなみにあの後、俺たちを助けてくれたのは第二軍副将軍のグリーク様だった。
たまたま休暇で知り合いの旅芸人さんと会っていたというグリーク様は、比較的近くにいらっしゃったらしい。派手な破壊音に駆けつけてきてくださって、参戦してくださった。
グリーク様にはうちの将軍を守ってくれてありがとうと感謝されたけれど、当のニルオス様は一味の一人が持っていた書類を発見して読むのに夢中で、俺のことは頭にもない様子だった。別にいいけれど、俺より書類って何だかちょっと複雑だ。
ちなみにグリーク様によるとニルオス様は文章を見ると最後まで読んでしまうくせがあられるらしい。ニセ銀貨の件には最初から何かひっかかる部分があるとおっしゃっておられたらしく、そのせいもあるだろうとのことだった。

昨夜はそのまま事後処理で徹夜になってしまった。
徹夜のせいで、約束していたラーディンと一緒に過ごすこともできなくて、ラーディンには悪いことをしてしまった。
本当は猫探しに行ったのになぁ……とんでもない捕り物になった。

ちなみに猫集めの一件は片付いたらしい。
第五軍のお二人が大量の猫を集めてくださったそうだ。
シード様によると部下がよく協力してくれたとの話だけれど、すごいな。第五軍は猫をうまく集める伝手でもあるんだろうか。

「さぁね。あと、ネズミの大量発生になった原因が判明したから、問題の南東地区には衛生管理の官と第四軍の隊を派遣することになったよ」

フェルナンによると食料庫のネズミの件が片付いたのちには、害獣問題が多い地区で猫の飼い主を捜すことになるらしい。
とりあえず一件落着、なのかな?

「ところでスティール。今日の昼に食事を外でしようかと思うのだけれどどうだい?」

外で食事をということはそれなりのランクの店へ行こうという誘いだろう。
うん、断る理由はない。ちょっと嬉しいな。
フェルナンと約束をして執務室を出るとカイザードに会った。そういえば今日から出勤だっけ。

「スティール。土産を持ってきたぞ。今夜空いてるか?」

いえ、今日はラーディンと約束があって。

「じゃ明日予約な」

はい、楽しみです。

昼にフェルナンと食事で、夜は昨日の埋め合わせでラーディンと。
明日は戻ってきたカイザードと一緒。
思いがけないハプニングのせいで休日出勤になってしまったけれど、これならそれほど悪くないな。
ちょっと疲れたけれどね。
フェルナンと食事をした後は、夜まで少し眠ろうかな。

<END>

もともとブログ用に書いていたところ、長くなりすぎたので止めました。
それでこの話はスティール一人称になっております。