※性的描写があります。苦手な方はお気を付けください。
冷たいスティールの手が触れてきたらそれが合図だ。
胸を通り過ぎて脇腹に口付けが落とされる。敏感で弱い場所への刺激に声が漏れる。
「…んっ……うぅっ」
体温が低いスティールの手が体に触れるたびに無意識に体が跳ね上がる。
ただ肌を撫でる手が妙に気恥ずかしく、敏感に感じられる。その手がスティールの掌というだけで熱が増すようだ。
ふと気づくと自分ばかりが熱くなり、自分ばかりが全裸になっている。一方のスティールは冷静で服も殆ど乱れていない。自分ばかりが乱れているという状態にラーディンはいらだちを感じた。
「ま…てよ、スティールッ…」
「…嫌だといったら?」
「違っ…お前も…」
お前も脱げと言いたかったのにスティールはラーディンの乳首を噛んだ。敏感な箇所への刺激に体が跳ねる。
「あぁ…っ」
胸を舌先で転がされ、愛撫されたまま両足を抱えられる。とっさに足を閉じようとしたが、スティールの体が足の間に入っていて、それは叶わなかった。スティールは乳首を銜えたままの腿の内側を撫でていく。太股の内側はラーディンが弱い部分の一つだ。スティールの指先が内股を掠めるたびにビクリと体が動いていく。
「んっ…あっ…スティールッ」
胸と足への愛撫でラーディンの中心は、既に角度を急にして先走りを滴らせている。
太股を掠めていく指がラーディンの中心近くを触れていく。しかし肝心の蜜が滴る場所へはなかなか触れて貰えない。そのもどかしさが余計にラーディンの情感を煽った。
「あ…あ…そこ…違……あっ…」
自然と腰が訴えるように揺れていく。スティールもラーディンが何を訴えているのか判っているはずだ。しかしスティールはけして中心には触れることなく、きわどい場所ばかりを責めていく。幾度も期待を裏切る愛撫にラーディンは時折訴えるようにスティールを睨んだ。しかしスティールは涼しい顔だ。
(お前は欲しくないのかよ…!)
欲してほしいのに、欲して貰えない。
同じように乱れてほしいのに自分ばかりが煽られ、乱れている。
殆ど身につけていない状態と全く着崩れていないスティール。
その差が互いの心の温度差のようにも思えて、ラーディンは悲しくなった。
ただの偶然でただの相違だ。判っているのに感情が止まらない。
「…ッスティール!!」
頼むから欲してほしい。自分を欲しがってほしい。
そう心から叫んだ想いにスティールは何らかの違いを感じたのだろう。不思議そうにラーディンを見た。
「ラーディン?」
「…早くっ!!」
「まだ全然慣らしてないんだけど…」
少し戸惑ったように呟いたスティールは唐突にクリームを取り出すと互いの体に塗りつけた。
「ゴメン、我慢してね、ラーディン」
いつもはこちらが嫌がるほど執拗に慣らすのにスティールはラーディンの求めに素直に応じた。
何度体を重ねても最初の衝撃は辛い。しかしスティールから与えられるものだということがいつもラーディンを満足させている。
(スティール……スティール……離れたくねえよ…っ……)
心も体と同じように求めたら返してもらえて、物理的に繋げ合うことができればいいのにと思う。
体であれば共有できる快楽や痛みが心では見えもせず、感じることもできない。
いつもは繋がりあう状態になると酷く気持ちが良いばかりなのに、この日ばかりは何故か涙が止まらず、ラーディンは無言でスティールの体を抱きしめ返した。