ハッキリ言って自信などないのだ。売り言葉に買い言葉となってしまったが、正直言って大丈夫かなと思う。
挑発したのは理由あってのものだった。
「おい、スティール。あの異種印の相手は繰り返し抱いておけよ」
部屋でコーヒーを飲んで寛ぐスティールへ小竜は突然告げた。
スティールは思わず咳き込みそうになり、慌ててカップを卓上に置いた。
「な、何で?」
「成人済みで異種印だからだ。しかもお前が水であっちは風。相性がよくない。実際、一度の交わり程度じゃ印の力が解放されてないようだ。カイザードやラーディンは邂逅の儀からさほど経っていないうちに交わったから解放も早かったが、今回はそう簡単にはいかねえぞ」
「そういうものなの?」
「同じ印同士なら火と火が混じる、水と水が混じるってことだ。その場合、多少色や温度が違っても、反発しようがねえだろ。くるくるっと混ぜちまえば同じだ」
小竜はコーヒーカップの中身を混ぜる仕草をした。なるほど、確かに液体同士なら混ざり合うだろうし、焚き火に火のついた木を放り込んでも炎同士は混ざり合うだけだろう。
「今回の場合、お前の水とあちらの風だ。どうやって混ぜる?混ざりようがねえだろ?どういう意味か判るか?混ざらねえんだよ。だから強引に解放する。互いの印をこじ開けるんだ。同種印のように穏やかにふたを開けて混ぜるようにはいかねえ。力業になる」
なんだか物騒な話になってきたとスティールは思った。ただ抱くだけの話ではなかったのだろうか。
「しかも成人後じゃな。印は使えば使うほど使い手に馴染む。ようするに頑丈になる。解放の儀からさほど経ってなかったら真っ新な状態だから解放もしやすいんだが、あいつは随分使い込んでいたからな。前回の交わり程度じゃ全く解放されてねえぞ」
それはそうだろう。フェルナンは卓越した印の使い手でも有名だ。馴染むか馴染まないかで言えば馴染みまくっているのではないだろうか。
「…あのさ、解放しなきゃ駄目かな?俺、かなり嫌われてると思うんだけど…。共に生きる覚悟は決めているけど、ヤるヤらないは別にして考えられないかな?それか、もうしばらく待つとか…」
でないとまた強姦になりそうだとスティールは思った。できればああいうことは二度となしにしたい。生きるか死ぬかの場面ならともかく平常時にはただの犯罪だ。
「却下だ」
手のひらサイズの小竜は偉そうに背を伸ばした姿勢であっさりと告げた。
「なんで!?」
「お前な、あいつはお前の水の印の相手だぞ。鍛冶に必要なのは火と水だ。俺は待って待って待ちくたびれたぐらいだぞ。とっととヤって印を解放してこい!」
そこかよ、とスティールはがっくり肩を落とした。
喧嘩の末、とりあえず挑発してみろという小竜のアドバイスを受けたスティールは、心底嫌がられたら止めるからなという条件でフェルナンの元へ出向いた。正しくは探そうとしていたところでサフィンから連絡を受けたのだ。
結果的には成功だった。後は恐らく大丈夫だろう。何しろドゥルーガがいるからだ。彼は絶対スティールに対して抱かれる側を許さない。押し倒されたところで助けてくれるだろう。
『なぁ印をこじ開けるってどうやったらいいんだ?』
『さてな。基本的に印の解放は生気の交わりという点において違いはない。前回は相手が死にかけていたから、相手には生気が欠けていた状態で、ほぼお前側から注ぎ込むだけという状態だった。だから前回は無しと考えていいだろう。とりあえずヤってヤってヤりまくれ。生気を混じ合わせたら解放される。それだけは確かだ』
ただし、一回で解放されるとは限らないが、と小竜。
スティールはげんなりなった。そう何回も許してもらえるだろうか…。