文字サイズ

◆銀の城(3)

※性的描写が含まれていますので、苦手な方はお気を付け下さい。


広い寝台は予想通り、とても上質のシーツの感触がした。
コウの手によって、肌触りのいいシルクのパジャマがするりと肩から脱げ落ちる。
コウと目を合わせることができず、落ちたパジャマをサヴァは見つめた。
露になった胸部にコウの白い手が触れていく。
大切に抱かれたことなどなかった。それだけに優しいコウの手つきがひどく気恥ずかしい。
おまけにコウの容姿が容姿だ。今更、容姿で争う気はないが、コウに比べれば痩せすぎて貧弱な自分の体など全く魅力はないだろう。そのことが妙に気後れする。
その上、コウの護身術で鍛えているという体には贅肉など全くなく、無駄のない綺麗な筋肉がついていた。細身だろうと勝手に思いこんでいた相手の思わぬ体にサヴァは気後れを感じながらも、目が吸い寄せられた。
コウはそんなサヴァの視線に気づいたらしい。柔らかく鎖骨の部分を吸いながら、揶揄するように問うた。

「見惚れたか?」

図星を突かれてサヴァは思わず真っ赤になった。
小さく笑ったコウの口は、触れるか触れないかのぎりぎりの距離を保ちながら、首に降りてゆく。
舌先の柔らかな感触にびくりとサヴァの肩が強張った。
サヴァの反応で気づいたのだろう。コウは首筋を舐め、そのまま肌を下へと進んでいく。
わざとだろう。口づける音に濡れた音が混ざっていく。
コウが肌に触れれば触れるほど、腰元に熱が高まるのを感じ、サヴァは軽く息を飲んだ。
あまりに優しすぎる扱いがもどかしい。
直接的な行為ばかりに慣れたサヴァは、優しいコウの愛撫に焦らされているような感覚に陥っていた。

「…んっ…んん…」

肌に触れるコウの吐息でゾクリと背が震える。
いいかげん、焦れったい。それでも急かすようなことは堪え性がないようでサヴァは出来なかった。
その時、コウの手がサヴァの下肢に触れた。

「……っ……!」
「随分、張りつめている」

コウはサヴァの性器を握り、先端に指を這わせていく。
形を確認するかのような撫で方にサヴァは背が震えた。

「あ……っ。コ、コウ…ッ」

ポタポタと零れ落ちていく先走りにコウの手が濡れていく。それがひどく卑猥に感じられて、サヴァは息を飲んだ。自分は男娼だ。コウよりはるかにこの手のことに慣れているはずなのに全く余裕がない。性器はすっかり勃ちあがり、次の行為を求めている。

「大丈夫だ、まかせておけ」

コウの囁きはとても甘く、その言葉だけでサヴァの緊張に強張った体から力が抜けていった。
笑んだコウは先走りに濡れた指をサヴァの潜められた奥へと差し入れていった。
優しく笑んだコウの触れるだけの口づけが泣きそうなほど優しかった。

中に入った指は緩やかに、けして傷つけぬようにゆっくりと内部を解していく。
時間をかけて少しずつ指は増えていく。
中を犯す圧迫感により、強張っていたサヴァの体も徐々に指が生み出す熱に乱されていった。

「……ふっ……、あっあっ……ああっ!」

ゆっくりと優しく。コウの動きはとにかく優しく思いやりに満ちていく。
もどかしくも内側を掻き乱す動きが、何とも言いようの無い感覚を引き起こし、サヴァは必死に耐えた。
もっと強いものが欲しい。決定的なものが足りない。
もどかしさに自然と腰が揺れていく。
欲する言葉を口にしようとした矢先にコウと視線があった。笑むコウの表情に視線を奪われる。

「…サヴァ」

指が引き抜かれ、腰を僅かに上げさせられる。
待ち望んでいた強い衝撃と痛みがサヴァの体を貫いた。

「…あああっ!!」

痛みと快楽の両方がサヴァの体を襲う。
波のように襲いかかる快楽と痛みは圧倒的な衝撃で、サヴァは必死に背に縋り付くように腕を回した。

「サヴァ」

繰り返し名を呼ばれる。それだけが確かで、それだけで酷く安心した。
コウだ。自分を抱いているのはコウなのだ。
そう思うと心の奥底から甘い感情がこみ上げてきた。
奥を貫くコウのものが強く内部を擦りあげる。
緩やかな愛撫でさんざん焦らされていた体は瞬く間もなかった。

「あ、ああああっ!!」

サヴァは声をあげると精を吐き出していた。
男娼時代に一度も感じたことがないほど、強い絶頂感だった。