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◆にわとり印のパン屋の話(その15)


たまに来てくださるクリーム色の髪のお客様がいらっしゃった。
舌の肥えたお知り合いの方の代理で来てくださったそうだ。
舌の肥えた方に認めていただけているなんて嬉しい話だな。

「何?ウェールの店だったのか!」

どこからともなく声がした。
今、お客様は目の前の方だけなんだけど、どこから声がしたんだろう。

「ウェールのお店ニワトリ印のパン屋支店です」
「長い店名だな」

声はすれども姿は見えぬ相手に答えてみたら、返事がきた。
なんて不気味なんだ。俺、白昼夢を見ているのかな?

渡された上品な籠に頼まれたパンを入れていく。
そうして代金を貰って商品をお渡しした。

ところであの籠はどなたの籠だったっけ。
いつも見ているはずなのに籠と相手が思いつかない。うーん、どなただったかなぁ。

<END>

ドゥルーガが新しい看板に気付いたという話。
スティールは某人物からパシられています。