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◆にわとり印のパン屋の話(その11)


週一回やってくる常連さんが来ると週末だなと思う。
長身で短めの黒髪の常連さんは東の地区にお住まいらしい。
毎朝、乗合馬車で第一軍本営までやってきて、俺の店に週に一度だけ寄ってくださる。

『今日は俺の日なんだ』

…とのことだけれど、意味がよく判らない。
けれどこのラーディンさんはいつも多くのパンを買ってくださるんでいいお客様だ。
自分の分だけでなく、友人や部下の分まで買って行かれるのだ。
そんなお客様だが必ずカツサンドと二色パンを買っていってくださる。
二色パンはカスタードクリームとチョコクリームが半分ずつ入った楕円形のパンで人気商品だ。
常連さん曰く。

『分け合えて食べれるからいいよな』

…だそうだ。
そうおっしゃったとき、すごくいい顔をしてらっしゃったからきっと素敵な相手がいらっしゃるんだろう。
さっぱりした、いい雰囲気の人だから何となく頷ける。独り身なわけがない。周囲が放っておかないだろう。

二色パンは特定の常連さんに人気だ。
そういえばカイザードさんもお好きだよな。
顔の良い常連さんに人気なのかもしれない。

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