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◆ウェールの守り神(6)


ウェリスタの支店長シオより報告書を見せてもらい、説明を受けていたシェルはその日の夕刻、部下から報告を受けた。

「何だって?バディがいない?」

聞けば町を散策中にいなくなってしまったのだという。
見逃してしまった護衛も護衛だが、そのまま姿をくらます兄も兄だとシェルはため息混じりに思った。

「人を増やし、早急に探し出せ。金も使っていい。迅速にな」
「はっ!!」
「俺も空から探してきてやろう」

退屈していたのか、ルーも窓から出ていった。
私も人を出しましょうか?とシオが申し出てくれたのでありがたく受けることにした。何しろ他国だ。地理的に覚束ない面がある。
日が完全に暮れた頃、バディは見つかった。地元の酒場にいたという。
説教せねばと待ちかまえていたシェルは思わぬ事を聞いて驚いた。

「何だって?」
「だから!!ルーが攫われちまったんだって!!」

黄竜が攫われた?とシェルは目を丸くした。どうやったら攫われるのかあの黄色いのが。

「……どうやって」
「俺の肩に乗ってたんだけどよ、鳥みたいにわしづかみされて革袋に入れられて、そのまま走って逃げられた!!」

冗談みたいな話だとシェルはがっくり肩を落とした。珍しい生き物だと思われて攫われたのか、黄竜と判っていて攫われたのか判らない。しかし放っておく訳にもいかないだろう。

「全く面倒な…」
「んなこと言ってる場合じゃねえだろ!?ルーが食われちまったらどうする!?」
「あんな不味そうなトカゲもどきを食べるヤツがいるか。ルーだって抵抗するだろ」

一応七竜だ。自力で脱出してくる可能性も高いに違いない。だが万が一ということもある。

「全力でルーを探し出せ。黄竜とは明かすな。黄色のトカゲという名目で探せ」

命じた後、シェルは兄に向き直った。

「さぁて…バディ。言いたいことはあるか?俺はたっぷりあるぞ。大体お前はここがどこか判っているか?判っていながら一人でのこのこと町を彷徨い歩いたというわけはないよなぁ…?」

そもそもの原因はこの兄にある。この兄がのこのこ姿を眩まさなかったらルーだってシェルの側を離れることはなかったのだ。
たっぷり説教とお仕置きをするつもり満々のシェルであった。