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◆ウェールの守り神(11)


籠に入れられた小竜は盛大に困っていた。
少々面倒なことになっているらしいことは船員たちの話から判っていた。
しかも面倒事は更に大きくなっているようだ。先ほどから船が大きく揺れ、上の方からは怒号や悲鳴じみた叫び声が聞こえてくる。
耳障りな金属音は武具が鳴らす音か。恐らく戦闘が起きているのだ。
やがて、逃げろという声と共に水音が響いてきた。積み荷を降ろしているのだ。

(負けたのか)

積み荷を海に捨てているということは少しでも荷を軽くして船体の動くスピードを上げようとしているということだ。荷がなくなればなくなるほど軽くなった船の動きは速くなり、当然ながら逃げ足もアップする。

(私を捕らえたりするからだ。ざぁまみろ!)

黄竜のルーは気分がよかった。不本意な状況におかれているのはこの海賊達のせいだ。そいつらが負けたというのは気分がいい。
そんなルーは重要なことを忘れていた。
ルーを捕らえた海賊サルヴァドスは人身売買や珍しい希少生物を取り扱っている海賊である。
当然ながら見た目は『金色のトカゲ』であるルーは商品として捕らわれているのだ。
つまり『積み荷』扱いである。
さほど間をおかぬうちにルーがいる倉庫へ飛び込んできた海賊達はルーと一緒に捕らわれている動物たちを檻ごと海へ放り出した。

(!!!まさかっ!!!??)

ルーが気づいたのは他の檻が海に放り込まれているのを目撃したときだった。
あまりにも遅すぎる。
当然ながら、ルーが入れられている鳥かごもそのまま海へ放り投げられたのである。

「ぎゃあああああ!!!何をするばかものーーーーっ!!!」