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◆人形なる獣(4)


ディルクは今は亡き黒将軍の一人の側近だったという男だ。
彼はその将軍を失い、誰にも従わなくなったという。のちにその振る舞いから凶器の刃を持つ男と呼ばれるようになったそうだ。
ディルクは白兵戦に突出した能力を持つという。細身の片刃剣を持ち、何もかも切り落としていくのだそうだ。
そのディルクはノースの期待以上の働きを見せた。作戦通りに動き、期待以上のスピードで担当場所を制圧し、滞りなく作戦は終了した。
ディルクは常に薄ら笑いを浮かべているつかみ所のない雰囲気を持つ男だ。
しかしその能力に問題がないことを直に確認し、ノースは満足した。これならば今後また作戦に参加してもらうこともあるかもしれないと思った。

「問題なかったよ。彼と彼の部隊はよき働きをしてくれた」

黒将軍会議でノースはそう報告した。
本当にそう思ったから、そう報告したのだ。
他の黒将軍たちはその報告を聞いて、思案顔だった。だから他の黒将軍たちも『はぐれ』を使うようになるかもしれない。ノースはそう思った。
このときはそう思っただけだった。


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「よくもあんな殺人狂たちを使えたな。さんざんだったぞ、ノース」

そう同僚に愚痴られたのはそれから約三ヶ月後、軍総本部の廊下であった。

「フリッツとディルクを連れていったが、暴走寸前の有様で出さなくていい被害をだした」

忌々しげに告げるサンデにノースは眉を寄せた。
自分の時は問題がなかった。しかしたまたまだったのだろうか。
元々悪い噂ばかりが有名な彼等だ。運が良かっただけなのかも知れない。

(まぁダンケッドさえ参加してくれたら呼ばなかった相手だ)

忠告は聞くべきだろう。
もう呼ぶことはないかも知れない。このときはそう思った。