綱~勝利をたぐり寄せる手~


 一方、王宮。
 広すぎるほど広い自室で国王バロジスクはレンディと向かい合っていた。
 二人の間にはチェスがある。彼らはチェスを好むのだ。

「次の王はベルンストか」
「ダンケッドを怒らせたのがマズかったね。さすがに今回の顛末は馬鹿だと俺も思うよ」
 
 ダンケッドを味方につけておけばまだ逆転の可能性があったのに、とレンディ。

「けどアスターがベルンストを焚きつけたみたいなんだよね。王になるため奪い取れとでも言ったのかな?」
「ほう、それは興味深い。きっかけを作ったのはアスターか」
「でもさ、状況が見えていないのは問題だよ。バルドイーンは絶対にダンケッドを手放すべきではなかった。王となるためには絶対にダンケッドの持つ力が必要だった。ならば下位の愛人なんか放って、ダンケッドを優先すべきだったんだ」

 状況を見極める目を持つことは王として重要だ。そこが二人の兄弟の命運を分けた。
 バルドイーンは酷く後悔して落ち込んでいるそうだが手遅れだ。ダンケッドはもう決断してしまった。

「まぁこの結果は当然ではないか?源泉の魂を持つ者は王にこそ相応しい。アレが第二王子を選んだ時点でこの結果は分かりきっていた」

 小竜状態でレンディの肩にとまった青竜がそう告げた。

「王の側にいて王をよき道へ導く者。王と共に国を発展させる最高の片翼となれる存在だ。あれはそなたかベルンストの側にいれば大いなる力になるということだ」
「なるほど。……まぁ確かにアレと一緒にいると退屈しないがな」

 国王は懐から一つの小箱を取り出した。それには一対のピアスが入っている。この国の王位継承者に受け継がれてきた品だ。つまりはこれを受け取った者が次代の王という証となる。

「王を導く者か。ならばこれはアスターから渡させるか」
「ちゃんと意味を説明しなよ?アスターはそのピアスが持つ意味を知らないと思うから」
「それもまた一興ではないか?」
「もー、そういうことをするからアスターを怒らせるんだよ」

 レンディは呆れ顔で指摘したが王は笑って受け流した。
 そんな経緯でそのピアスはアスターに預けられることとなった。