綱~勝利をたぐり寄せる手~


 ベルンストの部屋を退出したアスターは、ちょっとくせっ毛で濃いめの灰色という感じの髪色をした王子に声をかけられた。年齢はクリフトと同じく二十代前半だろうか。大変生真面目そうで神経質そうな雰囲気の人物だ。
 
「ええと、確か……ルーウィー第七王子殿下?」
「そうだ。先日、そなたがクリフト兄上を助けてくれたと噂で聞いた。そんなそなたを見込んで頼みがある。どうか我が弟妹を助けてほしい」
「ええと……陛下がレンディに命じたことなら撤回していただけましたが」
「父上がレンディに何を命じていたと?」
「あー、ご存じなかったんですか。ならいいです。もう撤回された内容なのでご存じなくても問題ないんで。それで弟君と妹君をお助けすればいいんですか?」
「そうだ。あの子たちはまだ幼い。片手の数も生きていない子だっているんだ。兄上方に適うわけがない。幼すぎて嫁ぎ先すら見つからない。どうにかして助けたいんだ」

 真摯な訴えを聞き、アスターは以前部下から受けた報告を思い出した。
 王宮にはアスターの部下が掃除人や洗濯係など偽りの身分で入り込んでいる。彼らは情報収集役であるカークの部下のサポートをしている。そんな部下の一人がある王子が弟妹を外で遊ばせてやりたいと呟いていたと話していたのだ。恐らくはこの王子のことだったのだろう。

「判りました。継承権を放棄すると宣言したら助かるように陛下に頼んでみます。それでいいですか?」
「……頼んでいいか?大変危険なことだが」
「俺の事ならご心配なく。何とかしてみせます。もし駄目だったとしても俺の部下を護衛につけます。いかがですか?」
「それはありがたいが本当にいいのか?」
「はい。ちょうど王宮内の情報が欲しいと思っていたところでした。そのための人員を護衛という名目で怪しまれることなく送り込めるのは俺としてもメリットがありますので」
「なるほど、そういうことか。判った、よろしく頼む」

 そうしてアスターは再度国王の下へ向かった。
 そうして頼んだところ、十歳以下ならばと許可を得た。それを全年齢に上げてくれと頼んだが受け入れてもらえなかった。
 粘り強く抗議しようとしたが、レンディによって部屋から追い出されてしまった。

「どうして陛下はこんなに血なまぐさいことがお好きなんだろうな!?」
「そうだね……」

 自分も血なまぐさいことが好きだから強く同意できないレンディであった。