翌日。
昼食をとるついでにやってきたデーウスはセルジュの部屋の前に座り込んでいるレナルドに迎えられた。
「あんた、医者選び最悪」
ついに『あんた』呼ばわりされたデーウスは困惑した。
最初の医師はセクハラ医師だったという。
次に派遣した医師は『ヤブ医者』だと叩き返された。
そのため、今度こそと高名な医者を派遣したつもりだったのだが…。
「女医に男の下の世話までさせる気か」
重傷のセルジュはほとんど動けない。当然ながら全身の世話が必要となっている。
「……女医?」
「男好きな女医」
医者の性別まで確認していなかったことに気付き、デーウスはため息を吐いた。
なるほど、セルジュは激怒するだろう。
また謝らなければならないようだとデーウスは思った。はたして部屋に入れてくれるだろうか。
「すまなかった」
とりあえず目の前に青年に謝罪するとレナルドはしかめ面で頷いた。一応、謝罪を受け入れてくれる気はあるらしい。
「俺、帰れない」
レナルドなりに迷惑しているらしい。
無理もないだろう。レナルドはノース軍アスター部隊所属だ。セルジュもデーウスも直属の上官ではなく、本来、何の関係もない身なのだ。
「すまない。セルジュが回復するまでは側についてやってくれ。アスターには私から話をしておこう」
セルジュはレナルドを深く信頼しているようだ。身の世話などもすべてレナルドがやってくれているらしい。プライド高いセルジュだ。誰にでも体を見せる男ではない。今、レナルドが離れるのは彼にとって打撃だろう。せめてセルジュが動けるようになるまではレナルドが側についていてほしいと思う。
「………」
「頼む」
深く頭を下げると、レナルドはしぶしぶといった様子で頷いた。
アスターに頼まれている以上、彼もセルジュの元を離れるわけにはいかないと判っているのだろう。しかし嫌気が差しているのも確かなようだ。
「痴話喧嘩、迷惑」
本当に痴話喧嘩などという甘いものであればいいがと思い、デーウスは苦笑した。