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◆赤〜温かき生の紅〜(14)


将軍位による会議は王城の一室を使っておこなわれた。
略奪などを厳しく禁じられているため、王城は綺麗なままだ。しかし王族が立てこもった最奥の奥宮は血で白い通路が真っ赤に染まったという。
ガルバドス軍は王族を生かさない。どんな女子供であれ皆殺しにし、王家の血を絶やすのだ。

会議はノースを中心として行われた。
レンディは会議などの場ではあまり発言しようとしない。同格の黒将軍が同席している場合、彼以外の黒将軍によって進められることが多いのだ。
レンディは珍しく疲れを見せていた。激戦の連続でさすがの彼も疲労しているのだろう。
その麾下の青将軍は幾人か顔ぶれが欠けている。死者はいないが重傷者がいるという。
その中の一人セルジュはデーウスが身を預かっているという。会議の始めにデーウスがレンディに申し入れ、セルジュの部隊は丸ごとデーウスの元へ移動となった。残るは戦後処理のみであり、大きな問題とはならないのでレンディもあっさり受け入れたらしい。

(雰囲気が悪いね。無事、国を堕とせたというのに)

ノースはそう思う。
原因はレンディとデーウスだ。黒将軍の二人がぴりぴりとしたムードを漂わせているので、自然、会議室内は空気が重くなる。
これはさっさと解散させようとノースは思った。必要最低限のことさえまとめてしまえば、問題はないだろう。いつもやっていることだからだ。

「それじゃ解散。お疲れ様」

連絡事項を終え、解散を告げたノースはアスターが出て行こうとするレンディを捕まえたのを見て驚いた。しかも掴んだのは青竜ディンガの尾である。

「待て!!…坊!」
「アスター。ディンガの尾を捕まえるのは困る」
「あ?しっぽか?もしかしてトカゲみてえに切れるのか?悪い!それよりお前何で…」
「………」
「あ、こら、待て!」

無言で部屋を出ていくレンディを恐れることなく追いかけていくアスターにさすがのノースも驚いた。
他のメンバーも同じだ。レンディを恐れない兵は一人もいないと言っていい。ああも自然に振る舞う者を見たのは初めてなのだろう。
ノースは問うようにカークを見た。カークはアスターの直属の上官だ。

「カーク。アスターはレンディと知り合いだったのかい?」
「さぁ、存じませんが。アスターが捕らえてきたいい男なら知っていますよ。彼はなかなか有能な男で見る目がありましてね。素晴らしい筋肉の捕虜でしたよ」

いい男以外にしか関心がないカークらしく、部下のプライベートには無関心らしい。聞くだけ無駄だったかとノースはため息を吐いた。

(まぁいいか…)

少々気にかかるが、ノース自身、部下のプライベートに興味があるわけではない。
それよりも戦後処理の仕事が大量にたまっている。気にかけている暇もない。
そこでデーウスに呼ばれた。

「ノース。部隊を王都に残すかもしれない。セルジュが重傷で動かせないのでな」
「判った。予定より大人数の場合は報告が欲しい」
「判った」

デーウスはセルジュのことが心配なのだろう。かなり危ない状態らしい。
表情が硬いまま、部屋を出て行く様子を見送り、これは予想以上に戦後処理が厄介なことになりそうだと思い、ノースはため息を吐いた。