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◆赤〜温かき生の紅〜(11)

一方、知将ノースは他の部下を率いて王都攻略を行っていた。

(まさか本当にあの砦を墜とすとはね)

ノースは届いた報告に驚いていた。
地図上では重要な拠点となる位置にある砦。
しかしノースは最初からその砦は無視するつもりで動いていた。アスターたちに任せはしたものの、実際は形だけのつもりだった。重要な拠点になる位置にあっても作戦次第でどうすることもできる。ノースは後背を無視して直接、王都を墜とすことに決めた。大胆にも隣国を経由して王都に踏み込んだのだ。本来、二国から包囲され、窮地に陥ることになるが、そこはレンディ軍に足止めを任せた。レンディという強力な部隊はたった一部隊で不可能を可能とするだけの力を持つのだ。

(砦が堕とせたおかげで楽に動くことが出来る。デーウス黒将軍の軍が遠回りすることなく、直接こちらへ来ることが出来た)

そのレンディ軍は死に物狂いの攻勢に遭い、苦戦をしているという。麾下のセルジュの軍が一時窮地に陥ったらしい。幸い、砦を墜とした二人の赤将軍がこちらへ駆けつけようとしていたところだったので、彼等と合流することで何とか窮地を切り抜けたようだ。
幾らレンディとはいえ、数の差は苦しいものがあるだろう。少々無茶を頼んだ自覚はあるので少し安堵したノースである。

(アスターとイーガムには報酬を多めにあげないといけないな)

彼の上官カークには王都攻略の方を手伝ってもらっている。カークは、私生活には難があるが、非常に能力の高い将の一人だ。二人も三人もカークが欲しいと思えるぐらいに使える部下のため、王都攻略には欠かすことができなかった。
そのため、扱き使っているノースだが、カークは過重労働だと文句を言いつつ、街の一角にあった公衆浴場をちゃっかり占拠して、専用の簡易ハーレムを作っていた。
癒しのためだと当人は主張していたが、短時間の間に一体何をやっているんだと脱力したノースである。街の占拠は確かに命じたが、公衆浴場の私物化など許した覚えはないのだ。

(あと一息だ)

王都さえ堕とせばこの国はガルバドスの国になる。
ノースはそれを疑っていなかった。