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◆赤〜温かき生の紅〜(6)

一週間以上に及んだ特別研修を終えたアスターは、同様に研修を終えていた隊長たちを会議室に集めた。

「俺はお前らに教えておけと言われたことがあってな。その指導を行うぞー」

騎士隊長らはまた勉強かと言わんばかりの顔で集まってきた。

「なんじゃなんじゃ」
「室内ということはまた頭を使うことなのか?」

部下達は不満顔だ。

「いや、外でもいいんだけどよ。ちょっと支障があってな」

アスターはロープを取り出した。

「シプリ。練習台になってくれ。じゃ始めるぞ。まずは『敵将に良き男を見つけたときの捕獲方法について』だ」
「ちょっと、何ソレ!」
「いいか?素早く隙を逃さないのがポイントだ。どんな時も一瞬にして縛りをかけられねえと生きて捕らえることはできねえ。そのため、いついかなる時でもよき縛りを実践できるように練習しておくのが重要だ」

アスターは布袋の中から幾種類かのロープを取りだした。それぞれ異なる素材で出来ている。すべてカークから預かったものだ。
どよどよと周囲から声が上がる。

「いいかー?まず縄の素材についてだが…」
「もー、付き合ってられないよ!」

呆れ顔のシプリが去ろうとしたのをアスターは手にしたロープで一瞬にして縛り上げた。
おおーっという驚きの声が室内に響く。

「すげえだろ?ま、実践すりゃこんな感じだ。ある意味、戦場で一つの切り札になると思って頑張ってくれ。とにかくよき男を見つけりゃ絶対に生かして捕らえろというのがカーク様からの厳命なんでな」
「ほほう!」
「こりゃ凄い」

意外にも部下には好評である。
しかし縛りの実践台にされたシプリは怒り心頭であった。

「ちょっと、君!一週間以上も一体何を学んできたのさ!!縛りかよ!?」
「んー?うん………まぁな、半分ぐらいはそれかもな」

部下の疑問を否定できないアスターであった。