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◆赤〜温かき生の紅〜(4)

一方、アスター部隊。
アスターの同僚であるシプリとレナルドもアスターが赤将軍へ昇進したことを受け、部下を持つこととなっていた。今までは一般兵という規律の緩い階級出身だったこともあり、うやむやに出来ていたが、正式な騎士となった上、『騎士隊長』という階級になってしまったためにそれも出来なくなったのだ。
アスターが持つ部下は400。赤将軍としてはさほど多くない数だが、少ないとも言えない数だ。
隊長位にあるのは老兵ホーシャムと同じく一般兵出身のマドック。新たにアスター麾下となったカーラとユーリ。加えてシプリとレナルドだ。
カーラは女性騎士、ユーリは優しげな風貌の青年である。

「シプリ。あなた、ギルフォードの弟ですって?」
「兄をご存じなんですか?」
「ええ、一応ね。惜しいわぁ、好みなのにギルフォードの弟じゃ手を出すわけにはいかないわよねえ…」

そう言ってため息を吐くカーラは筋肉隆々の長身の女性だ。
ガルバドス国は女軍人を採用する数少ない国であり、女性も功績を立てると男性と同様に出世することが可能である。

「彼じゃ駄目なんですか?」

優しげな容貌のユーリを指すと視線を受けたユーリは笑顔で答えた。

「あ、私は女性には勃たないんです」
「そう…」

シプリは変人ばかりが集まったものだと自分を棚に上げて呆れ気味に思った。

「ところでノース様から幹部用の研修があると聞いてるんだけど」

アスター部隊は一般兵出身の騎士が多いため、ノースが部隊運営のための研修授業を特別に用意してくれたという。シプリたちはその研修を受けなければいけないのだ。

「この歳になって勉強せねばならぬとは思わなかったのー」

該当する老兵ホーシャムも困惑顔だ。

「ノース様も突然、将になった経歴を持つ方だからね。きっと効率の良い研修授業を組んで下さっているとは思うけど…」

他の将ならともかく知将が組んでくれたという研修だ。恐らく無駄にはならないだろう。

「アスターも一緒なのかな?」
「いや、彼は赤将軍だから個別授業を受けるらしいぞ、みっちりと」

しかも指導者はカークだという。さぞかし濃い授業となるだろう。

「…気の毒に…」

思わず同情するシプリであった。