アスターにとって手足が長いのは自慢だ。
確かに全体的なバランスを見れば手足は長すぎるだろう。しかしそのおかげで有利なリーチを得ることが出来、ここまで生き延びることができた。誇りに思いこそすれ、恨んだことはない。
「蜘蛛ねえ。そんなことを言われたのは初めてだ」
しみじみとアスターはぼやいた。
おかげでカークに気に入られることがなかったが、気に入られたいとは思っていなかったのでアスターは好都合だった。見方によっては手足の長さのお陰で無事にすんだと言えるだろう。
ちなみにアスター以外のメンバーは無視だったのでやはりカークの好みに合わなかったようだ。
「ぼ、ぼく、もう、やっていける自信がありませんっ」
「またかよ。今度はどうした?エドワール」
「あの失礼な新米騎士どもが坊ちゃまをへなちょこで、騎士として失格だと申しておるのです!」
どうやらまた苛められたらしい。気弱なエドワールが目に触るのだろう。
「別にいいじゃねえか。騎士として似合っていたらそっちが間違いだろ?俺たちは成り行き騎士だ。目標は騎士を辞める事じゃねえか」
アスターの適当な慰めはちゃんとエドワールに通じたらしい。エドワールは泣きやんだ。
「そ、そ、それもそうですね、ぼく間違ってました!」
「だろ?」
「そのとおりですよ、坊ちゃまっ!」
何年もの付き合いでエドワールの扱いに慣れてしまったアスターである。
そしてなんだかんだ言いながらもエドワールは打たれ強くなっている。すぐに立ち直るのが何よりの証だ。
「それより出陣が近いぜ。ちゃんと準備しておかねえとなー」
「はいっ」
「幸い、ここはレンディ部隊じゃねえ。うまくいったらレンディ様の目が逸れている間に辞められるかもしれねえぞ?」
「そ、そうですねっ!頑張って辞めましょう!」
「その通りですぞ、坊ちゃまっ」
「そうそう、目指せ、カリスマ被服師っ!」
「…カリスマ狩人…」
「おーっ!」
辞める気満々のメンバーであった。