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◆白〜終わりの見えぬ道を歩むこと〜(2)

騎士となったアスターたちは相変わらず青将軍セルジュ麾下にいる。
騎士になったのはアスターたちの他、ホーシャムとマドックである。
ホーシャムは勤続40年と言われる老兵士で、マドックは40代の体格のいいひげ面の男だ。
辞められなくなったという話をしたとき、ホーシャムは快活に笑い、マドックは苦笑顔であった。

「ただの兵士ならともかく騎士にあがってしまえば辞めるのはヤバイだろうな。うまく辞められたらいいだろうが、一か八かの賭けのようなものだ。外れたら命がなくなると思えば賭けるわけにもいかねえだろ。ほとぼりが冷めるまで続けた方がいいだろうな」

マドックの意見はアスターたちと一致するものであり、アスターたちはもうしばらく軍を続けることに決めていた。期間の目安としては一年だ。それぐらいで辞められたらいい…という願望つきの期間である。
そしてそんなアスターたちは新卒の騎士たちと同じ扱いを受けていた。兵士としては経験豊富だが、騎士としては新米なのでそうされたのだ。
そしてアスターたちは士官学校卒業の騎士たちから迷惑顔を向けられていた。本来、兵士が騎士にあがることは滅多にない。その滅多にない者達がいきなり加わったのでやりづらいだろう。しかも新卒の騎士達にしてみれば、自分たちより遙かに年齢も経験も豊富なものたちが同階級にやってきたのだ。やりづらくて当然だろう。
さっそく苛められそうになっているエドワールをトマとともに庇ってやりつつ、アスターはため息を吐いた。
一方、シプリは兄が騎士というだけあり、落ち着いていた。彼の家族は元々シプリを騎士にしたがっていたので大喜びだという。皮肉な結果で騎士となった彼は辞める気満々だが、環境がそれを許してくれなさそうだ。
無口なレナルドは相変わらずマイペースで無表情だ。時々空を眺めては鳥を目で追っているので狩人に戻りたがっているのは確かなようだ。しかし、辞めれないことも理解しているらしく、淡々と仕事をこなしている。

ちなみに部下を持っているのは、アスター、ホーシャム、マドックだけだ。
彼等は兵士時代から兵士を部下に持っているため、階級が上がった後もそのまま己の隊を指揮しているのである。アスターの同僚であるシプリたちが己の隊を持たないのは単に生き延びるためだ。無理に隊を持って、信頼できない兵士と一緒に戦場に立つより、新人の頃から一緒の同僚と戦って生き延びる方を彼等は選んだのである。目標は出世ではなく生き延びることなので当然の選択でもあった。そしてそれが許されたのは兵士だからだ。階級差が少なく、隊の管理も雑然としている兵士階級だからこそそんなことが許されるのだ。

そんな折、突然、出張命令が来た。
出張先はノース軍。
難易度の高い戦いを得意とする、智では随一と言われる知将の軍である。

(まぁどこだろうといいさ。今より悪いところはなさそうだしな)

出動回数及び前線回数が多いレンディ軍よりマシだろう。そう思うことにし、アスターたちはノース軍に貸し出されることとなった。