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◆創〜終わりを望む始まりの話〜(3)

(※軽い性描写がありますので、苦手な方はご注意下さい。)

何とか初日を生き延び、キャンプ地へ戻ったアスターは、小さくため息を吐いた。

「あの子がいたら生き延びられる戦いも生き延びられないよ」

そうシプリがぼやくが無理もないとアスターは思う。エドワールは見事に足手まといだった。

「まぁいざとなったら見捨てるしかねえよなぁ」

アスターもそう相づちを打った。
戦場は子守の場所じゃないのだ。生き延びるのが最優先。助けてやれるような余裕もない。職業軍人ではない彼等はそれほど腕が立つわけではないのだ。

食事をし、アスターは煙草を吸うためにキャンプ地を少し外れた。彼は煙草を嗜むため、吸うときは周囲に気を使っているのである。この世界は喫煙者がさほど多くないため、吸うときは場を離れるのがマナーであった。

「……っ…ぅうっ……」

キャンプ地近くの茂みで火をつけようとしたとき、嗚咽が聞こえた。
同じ兵か、それともエドワールか。まさかと思うが彼ならば同じ隊員として保護する必要があるだろう。やれやれ手のかかることだと思いつつ茂みの奥に入ったアスターは思わぬ光景に驚いた。

(うぁ…マジかよ…)

大きめの木に、もたれ掛かるようにして倒れていたのは端正な容姿の青年だった。年齢は二十代半ばに見える。艶のある綺麗な茶色の髪が汗ばんで肌に張り付いていて艶っぽい。しかし問題は下肢だった。しどけなく投げ出された下肢は殆ど脱がされていて、上半身も騎士服が殆ど脱がされている状態だ。一体何をしていたのか一目瞭然の状態である。相手がいなくて彼は一人だ。ということは和姦ではないだろう。和姦で相手をこの状態で放置するなどあり得ないだろうからだ。

一旦、キャンプ地へ戻ったアスターは何枚かの布とマント、水筒を持ってその場へ戻った。

「おい、あんた大丈夫か?」
「……!!」

驚いたのか相手はビクリと体を震わせた。
間近で見ると本当に容姿のいい青年だ。しかしそれが今回は不運になったのだろう。

「何されたかなんて聞かねえよ。運が悪かったな。こういうのが軍ではあるって聞いていたがマジだとはな。腐ってやがる。ほら、水だ」

マントを肩にかけてやり、水筒を差し出すと青年はゆっくり受け取った。

「……すまん」
「いいって。相手はどこの馬鹿野郎だ?力になれるかどうか判らねえが、教えてくれるなら協力できるかもしれねえぞ」

アスターが問うと青年は顔をしかめ、無言で俯いた。
その様子から答えられないような相手らしいと悟り、アスターは無言で湿らせた布を手に取り、青年の足に触れた。

「……!!何をする!?」
「何って後始末だ。あんた、そのままじゃ明日が辛いぞ。ここは戦場だ。明日動けないって話じゃ死ぬぞ?恥ずかしがってる場合じゃねえってことは判るだろ?」
「止せ、自分で出来る!だから…!……っ…!!」
「痛むんだろ?気にするな。力抜いて、楽にしてろ」

濡れた後孔に指を入れ、残滓を掻き出していくと青年の手がアスターの肩に食い込んだ。
必死に堪えているのだろう。聞こえる荒い息づかいが耳に届く。

「…んっ……ぁあっ……あ…っ……ん…くぅっ…」

すべて掻き出したときには青年の雄は再び昂ぶっていた。
今度は前に触れて達かせてやり、アスターは別の綺麗な布を手渡した。

「ほらよ、後は一人でも大丈夫だろ?」
「……すまん」
「じゃあな」
「待て!そなた、名は!?礼を…!」
「いらね。お互い知らねえ方が都合いいだろ?こういうのは。じゃあな」

互いに上司と部下だったら気まずい。相手は服装からして正規の騎士だろうから尚更だ。
面倒事になったら嫌だとアスターは制止する相手を無視してキャンプ地へ戻った。
夜の上、茂みの中は暗く、殆ど相手の姿が見えなかった。そのため、アスターは殆ど相手の容姿が見えなかった。
そのため、相手が身につけていた服の細かな形状や色が判らなかったのだ。知っていたらさすがのアスターも近づくのを躊躇ったかもしれない。
青年が身につけていた服の色は青。それは紛れもなく軍で第二位の高位を意味する青将軍の証となる色であった。