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◆迷闇の門(5)


※性描写が含まれていますので、苦手な方はご遠慮下さい。


それから約一週間後のことである。
ウィルフレドの元へ来客があった。フリッツに会いに来たのだという。
その客は同僚である青将軍でフリッツを他国から助けてきた人物だという。

「おいおい、フリッツ。しっかりしろよー」

そう声をかける相手はウィルフレドよりも背が高い。190cmほどあるという。
今も長い手足を折りたたむようにして床に座り込み、蹲っているフリッツと向かい合っている。
ウィルフレドはフリッツに関わるまで、その人物と交流がなかった。
しかし、良い機会だとウィルフレドはアスターにも助力を頼んでみることにした。
何しろ今は少しでも多くの協力者が欲しい。フリッツを心配してくれている彼ならばきっとリーチの件にも協力してくれることだろう。

「アスター将軍、相談したいことがあるんだが……」
「うん?何だ?」

相談相手が大きな人脈を持つ人物だと知るよしもないウィルフレドはリーチの状況を話し、助力を頼んだ。

「そりゃ気の毒だな〜。だがそういう事情ならあまり人には話さない方がいいよな。赤将軍の連中には頼まない方がいいか……」

何しろ内容が性奴隷云々だ。情報は欲しいが情報を明かす相手は限った方がいいとアスター。
その意見には大いに同感だったのでウィルフレドは頷いた。ウィルフレド自身、ほとんど誰にも明かしていない。内容が内容なので話せないのだ。
アスターはカークの元部下であり、おしゃべりではなく、穏和で善良そうな人物だったので話したのだ。

「んー、とりあえず俺は坊……じゃなかった、レンディに相談してみるからアンタは別の方から当たってみてくれよ」
「ま、待て!!レンディ様はマズイ!!あの方はリーチ様の境遇を事前に知っておられて放置されていたという話だから今回の件ではあてにならない!」
「……なんだって?」
「レンディ様はご存じだったらしいんだ。だから今回は別の方に助力を頼むしかない」
「レンディが知ってて放置していた?それは本当か?」

何故かショックを受けている様子のアスターに対し、ウィルフレドは頷いた。

「性奴隷の調教官であるエルネストに聞いたから間違いない。彼はレンディ様のご友人らしいからな。だから別の方面から当たってくれ」
「……ああ…」

その翌日、ウィルフレドは思いがけず、元上官と再会することができた。エルネストに王宮へ呼び出されたために向かってみると、リーチと再会できたのだ。

「レンディからの強い要請がありましてね。こんな調教途中の素材を解放するなどということは大変不満なのですが仕方ありません」

レンディの名がでてきたことでウィルフレドは昨夜来ていたアスターのことを思い出した。
まさか彼の依頼でレンディが応じてくれたのだろうか。だがアスターにはレンディはダメだと伝えていたはずだ。ならば何故だろうか。
半信半疑ながらも元上官が解放されたことが嬉しくて、ウィルフレドはエルネストに値段を問うた。

「調教途中の未熟な素材に値段などつけられません。とっとと連れていきなさい」
「後で返せと言われても応じないからな」

釘を差しつつ、連れて行こうとするとエルネストに呼び止められた。

「鍵ですよ」
「何の鍵だ?」
「それはリーチに後で聞きなさい。ただし、リーチに丸ごと預けてはいけませんよ。絶対に貴方が管理するように。それはご主人様としての最低限の役目ですよ」
「お、俺はリーチ様のご主人様じゃない!とんでもないことをいうなっ!」
「やれやれ、ご主人様としての自覚が足りない人ですね。まぁいいでしょう。これぐらいのことは予想済みでしたから。後で人を使わしますからその者にお聞きなさい」
「?」

怪訝に思いつつもウィルフレドはリーチと共に官舎へ帰宅した。
リーチは黒将軍時代、黒将軍に与えられた官舎にある自室で暮らしていた。
現在は引退しているために家があるのかどうか判らない。そのため、己の官舎へ連れ帰った。
幸い、ウィルフレドは青将軍であるため高級官舎を使用できる。ファミリー単位で寝泊まりできる広い官舎であるため、リーチのために客室を用意してある。
馬を使って帰宅したが、その最中、リーチはずっと赤い顔で苦しげにしていた。落馬しかねない様子だったのでウィルフレドがしっかりと体を支えていたほどだ。
リーチは軍人としては小柄な方だ。彼は巧みな印使いで黒にまで上がった人物なのだ。
最後には歩けなくなっていたため、殆ど抱きかかえるような状態で官舎へ入った。

「迷惑をかけてすまなかったな……」
「いえ、とんでもありません!もっと早くお助けできればと思うと……!!お体の方は大丈夫ですか?」

体調が悪いせいだろうと思いこんでの問いだったが、リーチは無言で顔を逸らした。
リーチは奔放な性格と言動で知られた黒将軍だ。黒将軍は大きな権力を持つが、リーチもその権力を行使したことで少なからず敵を作ってしまっていたらしい。
リーチは重傷を負って突然引退したが、引退すると言うことは大きな権力も失われるということだ。いろいろと準備して引退するのであれば問題はおきなかっただろう。しかし突然引退したことで準備することができなかった。その隙を突かれたということだった。
後を継いだアニータも元上官への気配りが足りなかったと悔いていた。リーチを罠に陥れた人物に関してはアニータがしっかり調べ上げて報復してくれたようだ。

「医師を呼びます」
「待て!!……これは、病気や怪我じゃない…!」
「は?しかし……」
「鍵を……っ」
「はい」

慌てて鍵を差し出すと、リーチはまたも無言で顔を逸らした。そして何やらブツブツと口の中で呟いている。声が小さくてウィルフレドには聞こえなかった。
そこへ来客の声がした。
この忙しいときにと思いつつ出てみると、白い髪の上品そうな老紳士のような人物が立っていた。

「王宮よりエルネストから派遣されてまいりました」
「リーチ様はお具合が悪そうなんだ。何の用だか知らぬが後にしてくれ」
「その具合に心当たりがあると申しても?」
「何だと!?そなたら、まさかリーチ様におかしなマネをしたんじゃないだろうな!」
「おかしなマネとは?私どもは性奴隷の調教師ですぞ」

あっさりと言われた言葉にウィルフレドは言葉に詰まった。
そもそも性奴隷の調教師という時点で常識家のウィルフレドには受け入れづらい存在だ。
そうしてロドニスと名乗ったその調教師と部屋へ戻ると、リーチが眉を寄せた。どうやら相手を知っているらしい。

「リーチ、お脱ぎなさい」
「……」
「貴方も自分の状態は判っているのでしょう?そもそも馬に乗ったらどういう状態になるか判っていたはずです」
「……」
「恥ずかしいのですか?ですが彼が貴方のご主人様なのです。ご主人様にすべてを見せるのは当然でしょう」
「待て!リーチ様に何てことを言うんだ!俺は…!」
「おだまりなさい。貴方がリーチをエルネストに預けた時点でこうなることは判っていたはずです。エルネストは国内一の腕を持つ天才。例え一週間でも預けられれば体に十分な変化がおきます。それが嫌なのであれば貴方は命がけで彼を取り戻すべきだったのです」
「……!」

あのとき、助けだすのは無理だと判断したのは自分自身だ。
その判断を間違っていたとは思わない。しかし自らの身を案じてリーチを助け出すのを諦めたのは事実だ。

「エルネストは貴方をご主人様として設定し、彼を調教しました。貴方の存在に興奮するように貴方に触れられれば感じるように、貴方の声で幸福になるように調教したのです。そして貴方以外に触れられないように貞操帯をさせています」
「!」
「彼は元軍人ですからね、徹底的に調教しておりました。さぁ鍵をお出し下さい」
「ここにある」

すでに手にしていた。さきほどリーチが鍵を求めたからだ。

「リーチ、脱ぎなさい」

再度促され、リーチは悔しげに唇を噛むと服を脱ぎだした。
元部下として、焦りが走る。脱がなくていいと言いたい。
しかし、露わになっていく肌にウィルフレドは言葉を失った。
体を横切る派手な傷跡。これが軍人を止めるきっかけとなった傷だろう。胸元から腹部にかけて一つ、そして太ももに一つある。
そして乳首に何故か大きなピアスが刺さっている。まるで釘のように見えるピアスだ。見ているだけで痛々しい。
一番凄かったのが股間だ。どういう作りになっているのか、そもそもどうやったら外れるのか判らないほど複雑なデザインの貞操帯だ。革製であちらこちらに革紐や細いチェーンが通っている。
そしてかなりきつめになっているのが判る。戒められた性器は赤く膨れあがっている。
その性器自体、編み上げられた革紐で戒められ、さらに太めのベルトで押さえつけられている。

「外してほしければご主人様に上手におねだりしなさい」
「なっ!そ、そんなことは不要だ!」

慌てて制止したウィルフレドをロドニスは冷ややかに制止した。

「なりません。貴方が彼の性欲を管理してやらねば彼は狂いますよ」
「なっ!?」
「貴方は彼の自我を守るよう依頼したはずです。そのため、エルネストは彼の精神に手をつけず、体に対して徹底的に調教を施したのです。それこそ四六時中、貴方に抱かれることしか考えられないように徹底的に性欲を高めました。しかもその調教が中途半端に終わってしまいましたからね、このままでは貴方が管理してやらねば色狂いになってしまうでしょう」
「そ、それは……」
「彼が今、咥え込んでいるのも拡張用の張り型ですよ」
「!!」
「苦しそうですね、いいかげん限界ですか?ほらおねだりはどうしました?しなければ外してもらえませんよ」

荒く息を吐いたリーチは小さく舌打ちし、ちらりとウィルフレドを見遣った。
その表情は酷く恥ずかしそうだ。
しかし、やらねばならないと判っているのか、仕方なさそうに動いた。床に座り込み、大きく足を開く。
何故そんな大胆な体位を取るのかと狼狽したウィルフレドはすぐに理由を悟った。足を大きく開かねばならないような場所に貞操帯の鍵穴があるのだ。
女性であれば膣があるであろう場所に鍵穴が見える。

「!!」
「……早く、しろっ!!」

狼狽したウィルフレドは顔を真っ赤にさせたリーチに促されて我に返った。
早く外してやらねばリーチはずっとこの体位を取らねばならない。

「し、失礼、します」
「そんなことは言わなくていいっ。お前が好きこのんでこんなことをやっているわけじゃないことぐらい知っているからな…!」

こんな状況でありながら気の強い態度はリーチらしい。
ウィルフレドは少し安堵して手を動かした。
そして鍵を外したウィルフレドは貞操帯を脱がそうとして戸惑った。

(ど、どうなってるんだ、これ……!?)

鍵がかかっていたベルトは細い。そのベルトが別の金属製の輪を通っている。その輪からベルトを外して、上の太めのベルトを外し、更にそれを固定している革紐があるため、それを解き………。

(わ、わからん!なんだこれは!)

ナイフでカットしようと短刀を取り出したウィルフレドにリーチはギョッとした表情を見せた。

「待て、そんなもの使うな!!」
「で、ですがこれ、複雑すぎて判らないんですが、リーチ様……」
「これは内部に鉄線が通っているんだ。そこらのナイフぐらいじゃ切れないぞ」
「ええっ!?」

まるで鎖帷子のように頑丈な作りになっていると知り、ウィルフレドは顔を引きつらせた。

「リーチ様、外し方をご存じですか?」
「俺には見えないところもあるんだよ!」

確かに後ろなどは見えないだろう。
結局、自力で何とか解くしかないと悟り、ウィルフレドは一つ一つ外していった。
しかし、きわどい部分を覆った貞操帯だ。ウィルフレドがずっと触れ続けているのだ。それだけでもリーチには辛いのだろう。赤い顔で唇を噛んでいたが、途中から涙目になり、己の腕を噛みだした。
ついにはその腕に血がにじみ出したため、ウィルフレドは眉を寄せた。

「リーチ様、声を出してもいいですからどうか遠慮なさらず」
「お、お前が聞くだろうが!」
「かまいません」
「い、嫌だ。俺は声が……高いから、女みたいな声になる」
「気にしません。だから腕を噛むのは止めてください」

なおも嫌だと首を横に振るリーチにウィルフレドはきつく告げた。

「ダメです、噛まないでください!」

普段のリーチならばはね除けただろう。しかし、ウィルフレドをご主人様として調教されてしまっているリーチには強い効き目があった。
ゆるゆると手を下ろしたリーチはクゥッと甘い声を出した。
なるほど嫌がるはずだ。リーチの声は酷く甘く聞こえる。鼻を抜けるような声は女性のように甘い。
一度声を出したら開き直ったのか、すぐに室内には甘い声が響き続けた。

「ぁあっ……ふぅっ……あぁ!あああっ……」

声はともかく腰を揺らされるととても外しづらい。

「リーチ様、動かないでください。外しづらいので」

複雑な貞操帯はまるでパズル状態だった。
あぁでもない、こうでもないと苦労するウィルフレドの要請に、リーチは顔を赤らめて耐えようとした。

「あっ……んんっ……っ……くぅっ……」

紐が動き、指が性器付近を掠めるたびに声を上げるリーチはとても辛そうだ。
そうして半分以上が外れたときは股間付近が先走りでびしょびしょになっていた。
そしてその性器を戒めている細い革紐を解くのが一番大変だった。

「ハッ……ぅうっ……ハァッ……ああっ…」


指先で絶え間なく愛撫をされているように感じるのだろう。リーチの上げる声が止まらない。止めようとはしているようだが、止められないのだろう。
竿から玉まで複雑に編まれている紐を頭痛がするような気分で何とか解くと、リーチだけでなくウィルフレドまで疲労困憊してしまった。

「さぁ最後にこちらを……」

調教師に促されて、リーチの後ろに刺さっている張り型を見てウィルフレドは驚いた。

「お、大きいな……」

ウィルフレドの言葉にリーチが顔を赤らめる。
指のような細いものではない。十分男性器ぐらいありそうな張り型だ。

「リーチはよく頑張りましたからね。ご褒美にそれで何度か奥を突いてあげてください」

よく判らないがそういうものなのかと思い、ウィルフレドは言われるがままにリーチに刺さっている張り型を手にすると、一度引き抜いて奥まで貫いた。

「あぁあああーっ!!」

一際甘い声を上げてリーチが達する。
ずっと戒められていた性器が解放されたことでやっと達することができたのだ。
元上司の気持ちよさそうな声を聞いて、ウィルフレドは安堵して張り型を動かした。

「ぁああっ、あっ……ま、待てっ……あ、ああーっ!!ふぁっ……あっ……!!」

待てと言われたが上司の蕩けた表情にそのまま張り型を動かしていると、すぐにリーチも腰を振り始めた。達した性器もすぐに勃起しているところを見るとやはりイイのだろう。

「カリのところで入り口付近を擦りつつ、数度に一度ぐらい奥を突いて上げてください」

ロドニスが使い方を説明してくる。
言われたとおりにすると、リーチの声が更に甘くなった。

「ひあっ……あああっ……うあっ……!」
「竿や玉に触れてあげるのもかまいませんが、なるべくご褒美としてさわってあげるようにしてください。そのことによってリーチの感度が増しますから。イクときは奥を突くことでイカせてください。リーチはその方が慣れています」

そして途中で乳首のピアスを引っ張るようにといわれた。

「アレは痛くないのか?」
「痛みにも感じるようにしてあるのですよ。彼は乳首は痛い方が好みます」

半信半疑で引っ張ると、悲鳴のような声を上げてリーチの背が仰け反った。
しかし、性器はびんびんに反応している。確かに痛い方が感じるらしい。

「あッ……ああっ、あまり、引っ張るな、イクっ……!!」
「ここでもイケるんですか?」

少し驚きつつもう片方の乳首のピアスを引っ張ると、

「ヒァッ!!」

リーチは大きく背を仰け反らせた。ビクビクと体が大きく震え、性器から精液を吐き出した。乳首の刺激で達したのだ。

「リーチ!そこでイってはいけないと教えられただろう?よりによってご主人様の前で!胸でイクとは女のようだぞ!」

ロドニスに叱責され、グッと言葉に詰まるリーチは悔しげな顔をしつつも反論しない。

「そこでイクと辛いのはお前だぞ。奥が物足りないだろう?」

恐らくそうなのだろう。図星を突かれたのか、やはりリーチは反論しなかった。
プライド高い元上司が言葉で責められながらも反論できない様子を見て、ウィルフレドは気の毒になった。

「ウィルフレド殿、リーチが欲しいですか?」
「い、いや……」
「では今日の調教はこの辺にしておきましょう。これからリーチを浴室へ連れて行きますのでどうぞお休み下さい」
「あ、あぁ……ではすまないが頼む……。俺はフリッツの様子を見てくる」
「かしこまりました」