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◆第一軍における従業員の帰還について (スティール視点)

モップが王家から戻ってきた。
今までどんな環境でも馴染んできたモップだったけど、ネズミ一匹いなくて、どの床もぴかぴかに磨かれまくっている王家は合わなかったらしい。
元気のないモップに殿下もお困りだったところ、たまたま王家に行かれたアルディン様がモップにお気づきになられたらしい。
アルディン様はシード様からモップが第一軍の猫だとお聞きされていたらしく、モップは第一軍に帰ってきた。

「第一軍に帰したと思ってたんだが、まさか王家に行ってるとは思わなかった。悪かったな」

いえ、シード様のせいじゃありませんから。
たぶん、うちに戻ってきた後、フェルナンが第二軍に貸して、第三軍へ行き、王家に行っちゃったんだと思うので。

「そりゃこの猫も大変だったな。異動の連続じゃねえか」

ちゃんと首輪に第一軍って入れておいた方がいいかもしれねえなとおっしゃられて、シード様は帰っていかれた。わざわざ第一軍までモップを届けてくださったのだ。必要ない謝罪のために。あの方のせいじゃないのに申し訳なかったなぁ。

「それにしても別人ならぬ別猫だなぁ」

ラーディンが久々にモップを抱きながら呟いた。
王家のペットになってたモップはしっかりシャンプーされていたのか、毛並みも艶々のふわふわで、毛先も綺麗に切りそろえられ、上品な色艶になっている。

「首輪にエリザベスって縫い取られてるぜ、スティール…」

さすがに名前は強制変更されてたみたいだ。そりゃモップじゃね。
けどモップ、お前、メスだったの?知らなかったよ。
メスならもっと綺麗にしておこうよ。

<END>

やっと帰ってこれたモップ。
この後、ラーディン家へ帰ります。