本家から監査役の方がいらっしゃることになった。
そのため、ウェールのお店、王都支店関係者で会議を開いた。
場所は歓楽街にあるサーダ・ムーンという娼館の一室。ルイスさんの手配だ。
今のところ、ウェリスタ国王都にウェールのお店は五店舗ある。
第一支店、第二支店、合法賭博のお店、パン屋、花屋だ。
店主は第一支店のルイスさん、第二支店のザジさん、合法賭博屋のミックさん、パン屋の俺、花屋のバルノさんの5人だ。
「うぁーっ、タイミング悪すぎだ。絶対ギランガの不手際を指摘されるぞ!」
そう言って頭を抱えているのは第二支店の店主ザジさん。
「いや、むしろ、不手際を起こしたからいらっしゃるんじゃないか?」
そう冷静に指摘したのは第一支店の店主ルイスさん。明るい茶色の髪を肩まで伸ばし一つに束ねた髪型をした、柔らかな容貌の三十代半ばの方だ。
「どうだろうな。だが回ってくる時期としてはおかしくねーよな」
腕を組んで冷静に告げるのは三十代前半のザジさんと同世代のミックさん。合法賭博を一手に担う店の経営者で違法すれすれのところで荒稼ぎをしてらっしゃるやり手の店主さんだ。
ミックさんは趣味的にも危ない人でいつもザジさんとルイスさんが見張ってらっしゃる。ザジさん曰く、ミックさんは放っておいたらいつか手足が無くなってドブ川に浮いているとのことだ。
「あいつはサド混じりのMだからな!」
とのことだけれど、深く知りたくない世界の話だ。
「ギランガのことは東の問題。総支店長のシオに責任をとってもらいたいところだな」
ルイスさんがそう言うとザジさんは頷いた。
「確かにシオがしっかりしてりゃ、こっちまで巻き込まれずに済んだんだよな。けどこうなっちまったら一蓮托生だ。うまく言い逃れできりゃいいが…」
俺にはさっぱり事情がわからない。
そんな話を聞きつつ無言なのは、俺と同世代の若い店主であるバルノさん。
長身で男前な方だが小さく愛らしい花屋の店主さんで、優良な支店に与えられる『ルーの黄金の足跡賞』を受けたことがあるらしい。これはウェール全店を対象に行われる賞でウェールのお店にとっては憧れの賞の一つだ。
「シオの奴はボケボケだからなー……なんで奴が総支店長なんだか。海軍島支店のクロウがギランガまで管理しちまえばいいのに、あの野郎、サボリすぎだ!」
ザジさんが舌打ちするとルイスさんも頷いた。
「確かにクロウの方がまだマシだ。サボリ魔だが実力は確かなヤツだからな。今回も途中でクロウが介入しなければ被害が拡大していただろう。シオは支店長の地位を先代から継いだ奴だ。実力など全くない。先代も呑気な方だった」
「世襲制なんかクソ食らえだ。本家を見習え。完全実力主義だ!」
「その通り、完全実力主義こそが正しい。……だが今、本家は東の大陸の影響を受けて、荒れていると聞く。監査役も誰が来るのか予測がつかん。さてどうする?」
「………どうする?」
「………どうしようか」
「………どうしよう」
視線を向けられたけど、ギランガ事情を全然知らない俺になにか意見が言えるわけもない。
結局、会議は堂々巡りになり、最終的にバルノさんの意見である『謝る』に決定した。
うう、処罰されなきゃいいけど、心配だなぁ。
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