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◆閉じた箱庭(2)


パスペルト国の第二王子ウィリアムが王家の血を引いていない可能性があると知ったのは、ウィリアムが10歳にもならぬ幼子の頃の事だ。
母は東の大陸ゼーピア国の王女であり、血筋としては申し分なきウィリアムだ。普通ならば第一王子ローシャスと次の玉座を争ってもおかしくない身だ。
ローシャスの母親は北の大陸エーデルシュタイン国の王女である。
どちらが王位についてもおかしくない血筋なのだが、ウィリアムを次の王にという話はおかしな程、全く聞かれなかった。
どのように厳しく箝口令をしこうと、容姿は隠すことができない。
ウィリアムの艶やかな黒髪も海のような青い瞳も、両親のどちらにも似ていないのだ。
生まれたタイミングも微妙な時期だっただけに妊娠時がいつだったのかハッキリ調べることはできなかった。
王や妃、そして重臣の間でどのような話し合いが持たれたのか判らない。しかし、ウィリアムは正式に王子として認められ、王家の一員として育てられることとなった。
それが公の真実であり、結果であった。