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◆ウェールの守り神(1)


世界には七つの大陸があるという。
その中で最大のゲウェナ大陸とその次に大きなサンテ大陸の間に、最小のパーム大陸はある。
パーム大陸を治めているのは商業国家であるパスペルト国。
シェルはそのパスペルト国で生まれた。

シェルは本名をシェール=ファ=ザード=ウェールという。
褐色の髪と同色の瞳を持つ、中肉中背のごく普通な青年だ。容姿的には普通だが、その眼差しに深い知性を感じると評する者もいる。
その商業国家の身分で言えば上クラスの家に生まれた。
家は伯爵家。しかし王宮の方には深入りせず、代々手堅く商売をして、がっちりとした基盤のある、揺るぎ無い財産を築いている。
爵位持ちの貴族にはかなり珍しいタイプであると言えるだろう。
今ではパスペルト国のウェール一族・・・といえば、知る人ぞ知る・・・というくらいには名の知られた一族になってしまっている。
その理由の一つに七竜がある。

莫大な力と知恵を持ち、持ち主に繁栄と栄光を与えると言われている七竜。
意志を持ち、自ら使い手を選ぶ。
普段は武具の形をしているが、実体は謎に包まれている。
かつて、大国の王が無理矢理使い手になろうとしたが、七竜は使い手を殺したばかりでなく、その国自体を消滅させたと言われている。
以後、七竜へは不干渉であることが暗黙の了解となったという。

ウェール一族は七竜の一つ、『黄金竜』の異名を持つ黄竜の使い手として名を知られている。