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◆銀〜罪の持つ真実〜(1)


そこはガルバドス国の高貴な者を収容する牢であった。
逃亡を阻止するために分厚い石造りの建物となっており、印が使えぬように何重もの封印が至る所に施されている。
その最奥に彼はいた。

黒い髪、青い瞳。年齢は一目ではわかりづらいが青年の世代に見える。
肉が落ちて細くなった腕には重しがついた枷。
首と耳には印を封じる特殊な輪がつけられている。
『高貴な者を収容する牢』とはいえ、牢の内部には粗末な寝台と薄い毛布しかない。
殆どの部屋が大差なく、『厄介者を収容するための牢』でしかあり得ないことはハッキリとしていた。

彼は元々はガルバドス国でも名の知られた将であった。
しかし彼は我が儘な性格であり、周囲の反発を招いていた。
高い功績、しかし同時に大きな問題も抱える人物であった。
結果的に殺されることまではなかったものの、最終的に牢へ入れられた。
そうして彼は、閉塞的なその部屋で身じろぎもせずに一日の大半を過ごしていた。