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◆灰〜終着の分岐点〜


目が覚めたとき、屋根が見えた。室内のようだ。
隣を見ると医師がいた。ガルバドスの服を着ていることを確認し、セルジュは安堵した。どうやら捕らえられて捕虜になることは免れたらしい。
安堵すると急激に眠気が襲ってきた。それが痛み止めの副作用だと気付くことなく、セルジュは眠りに落ちた。
次に意識が目覚めたのは三日後。
セルジュが戦場で重傷を負い、すでに一週間が経過していた。

アスター部隊麾下のレナルドはセルジュ青将軍と一緒にいた。
正しくは勝手にくっついていた。
アスター部隊はノース黒将軍の本隊とすでに帰国の途についていたが、レナルドはセルジュの付き人としてセルジュについていた。
レナルドがアスター部隊へ帰らずセルジュにくっついてたのは彼なりのワケがあった。

(喧嘩ばかり)

セルジュは意識を取り戻した後、デーウスと喧嘩ばかりしているのだ。
他の者は『デーウス様にお任せしていたら大丈夫』と安心しきっているが、レナルドには到底そうは思えなかった。セルジュ自身があれほど反発しているのだ。何故『大丈夫』に繋がるのかレナルドにはさっぱり判らなかったのである。セルジュとデーウスが元親友だということを知らないレナルドには二人が不仲としか思えなかった。
そしてアスターの命令は『大丈夫そうだったら帰ってこい』だった。

(大丈夫じゃない)

レナルドは彼なりにそう考え、くっついていることにした。