(※微18禁注意)
全く行動しない主(あるじ)だ。
その為、ディルクは主に愛撫してもらおうなどという期待はしていなかった。
抱いてもらえるだけでもありがたい。触れてもらえるだけでもありがたいと思い、過度の期待は一切してこなかったのだ。
だからこそ、ノースの腕がディルクの体に伸びたとき、ディルクは酷く驚いた。
「ノース様っ!?」
「なんだ?」
「いえ、あのっ……」
期待していなかった。
愛されることはとうに諦めていた。
だからこそ主に自ら触れてもらえることが信じられなかった。
「ぅっ……あっ……」
軽く触れただけで反応を見せるディルクにノースは気をよくしたらしい。小さく笑まれる。
あまりにも判りやすく反応してしまう己の体が恥ずかしい。
しかし主に触れてもらえるのだ。興奮してしまうのは当然であり、それを抑えることなどできない。
「ノ、ノース様っ、あのっ……あ、あまり触られては……その、限界がっ…」
「それは早すぎるだろう?」
「で、ですがっ……あっ……!」
必死に抑えようとはしているのだ。
しかし、主に触られているだけで勝手に興奮してしまうのだから仕方がない。痛みなどには幾らでも耐えられる職業軍人だが、主からの快楽は幾らでも享受するように調教を受けた体でもある。ノースからの刺激にはとにかく弱いのだ。
「……っ、ああああっ……」
結局、手淫だけでイッてしまったディルクは精液を主にかけてしまったと知って慌てた。
「も、申し訳ありませんっ!!」
どうしようもなかったとはいえ、とんでもない失態だ。
泣きたくなるほどの情けなさと羞恥を感じて慌てて拭おうとしたディルクにノースは小さく笑んだ。
「大丈夫だと言っているだろう。私がやりたくてやったのだから気にする必要はない」
「で、ですがっ……俺が我慢できなかったからっ…」
「私の愛撫で感じてくれたのだろう?気にする必要はない」
主にこれほど優しい言葉をかけられるなど夢ではないだろうかとディルクは思った。
ずっと避けられて、距離を置かれていた。
疎まれているのは判っていた。それだけにただ捨てられないことだけを祈って過ごしてきた。
触れられるのは長期出張など相応の仕事をしたご褒美としてだった。それも殆どノースは動いてくれなくて、一方的な行為だった。当然ながらノースからの愛情など感じることはできず、体はそれなりに満たされても心は冷え切ったままだった。
「どうした?」
いきなり泣き出したディルクにノースは怪訝そうに問うた。
「……いえ……嬉しくて……すみません……」
「………」
ノースにとってディルクは男らしい男だ。
ノースが憧れる男らしい体躯と将軍位に就く者らしい強さを併せ持つ男だ。
奴隷になることなどなかったら、腕の良い将として何ら歪むことなく出世しただろうと思える。それだけにノース自身がまともな将来を摘み取ってしまったような気がして、引け目を感じていたのだ。
ディルクという存在を受け入れるのに時間がかかった。それはノースの精神の未熟さゆえだ。その歳月の間、彼を辛い目にあわせてしまった。それもまたノースの未熟さゆえだ。
「すまなかった」
ノースがそう謝罪するとディルクは首を横に振った。
「私はこの通り、慣れていないんだ」
ノースがそう正直に告げると、ディルクは静かに笑んだ。
「俺も……この通り、敏感すぎるのでちょうどいいかもしれません」
つたない愛撫でも十分感じられると言うのだろう。
ディルクの気遣いと配慮を感じ、ノースは頷いた。
否定しすぎるのも相手の気遣いを無にする行為だ。素直に受け入れるのがちょうどいいと思ったためである。
「君とうまくなりたい。練習させてくれ」
「喜んで」
ノースが触れてくれるのであれば大歓迎なのだ。嬉しいばかりだ。
ずっと避けられていた。触れるどころか声を聞くことすら難しい日々だった。
そんな過去を思えば、この状態が信じられない。
やはり夢のようだ。
そう思いつつ、ディルクは伸びてくる手を受け入れた。
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