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◆カードゲーム(一万ヒット記念小話)


※性的描写が含まれていますので、苦手な方はご遠慮ください。


カードで賭けをした。
スティールは嫌がっていたが、カイザードは押し切って、半ば無理矢理同意させた。
スティールはカードを殆ど知らないと言っていたから、当然ながらカイザードが有利な賭けになるはずだった。
……が。


「ちくしょぉ…お前が器用なこと忘れてた…」
そうぼやく先輩相手にスティールは安堵のため息を吐いた。

(あー、良かった。器用不器用以前に俺、殆どカード知らないからなぁ…)

向かいに座るカイザードの背後には本棚がある。
その本棚にたまたまスティールの相方である紫竜が寝ていたのだ。
状況に気づいた紫竜はしっぽの振り方で取るべきカードを教えてくれたのである。
詐欺と言えば詐欺だろう。しかしスティールには負けられぬ理由があった。

(抱かせてくれって言われてもなぁ…)

ごく希にだが、カイザードはそう言ってくる。
スティールが拒絶すれば仕方ないと言いたげな様子で納得してくれるのだが、俺だってお前が好きだから抱いてみたくなることがあるのだ、と言う。
スティール的には大きな抵抗感はないのだが、やはり慣れた側がいいし、何よりドゥルーガが複数印持ちは抱かれる側になるなと言う。

(先輩には悪いけど諦めてもらわないとな)

抱かれるのも頂けないが、無理矢理賭けに参加させられたのも正直言って迷惑だ。
スティールは珍しく怒っていたのである。



「…何をするんだ?」
カイザードが問うてくる。

「うーん……じゃ、Hなことでもやりましょうか」

特に思いつかなかったので適当にそう答えるといつもとどう違うんだと問われた。

「とりあえず脱いでもらえます?」
「じゃお前も脱げよ」

先輩らしく、いつもの命令口調で返され、スティールは悪戯心が沸いた。
いつもは従うが、今日は逆らっても良いだろう。スティールは賭けに勝ったのだ。

「先輩だけで。俺、勝ちましたし」

そう告げるとカイザードはムッとした表情を見せたものの、しぶしぶ脱ぎ始めた。

「…あまり見るなよ」
「見なくてどうするんですか」

普段はスティールが脱がせるか、一緒に脱いでることが多いので相手が脱ぐところを見ることは少ない。徐々に現れる白い肌にスティールは満足した。これはこれでなかなか楽しい。
カイザードは視線を感じるのか少し目尻を赤らめている。

「…脱いだぞ」
「えーと…じゃこれを」

スティールはいつも使っている潤滑剤を差し出した。意味が分かったのかカイザードは躊躇いがちに受け取る。

「ちょっと多めにとって塗り込んだ方がやりやすいですよ」

アドバイスするとカイザードはベッドの上に座り、控えめに足を開いた。スティールに見られるのが嫌なのだろう。視線を気にしたようにスティールの方を見ては躊躇いがちに蓋を外し、指で柔らかめのクリームを掬い取る。そして思い切ったように指を差し入れる。

「ん…っ」

自分で慣らすことに抵抗があるのだろう。少し指先を入れただけで止めてしまったカイザードにスティールは首を横に振った。

「駄目ですよ先輩。それじゃ全然慣らせてないです」
「で、できるか、こんなことっ!」
「俺はやってますが…」
「お、お前にされるのなら判るが、何で俺が自分でやらなきゃいけないんだ!」
「賭けの結果でしょう」

そう言われるとカイザードはグッと詰まった。自分で言い出したことだけに強く反論は出来ないらしい。
再びクリームを指で掬って差し入れる。第一関節ぐらいまでしか入っていないだろう。文字通り、入り口だけに触れているような状態だ。顔を真っ赤にさせたカイザードは恥ずかしくて仕方がないのか俯いたまま指を動かしている。しかし全く慣らせていないのは一目瞭然だ。

「い、入れていいぞ…」

恥ずかしさより痛い方がいいと思ったのだろう。そんなことを言い出すカイザードにスティールは無茶だと思った。

「慣らすっていうのはクリームを入れればいいってものじゃありませんよ、先輩」

スティールはカイザードのクリームに濡れた指を取り、そのまま己の指を添えて再度差し入れた。

「……あっ!!」
「ほら、こうやって奥まで慣らすんです。俺がいつもやってるでしょう?」
「…っ、んんっ…スティールッ、だからお前がやってくれれば…っ」

自分の指を入れている状況が恥ずかしくて仕方がないのだろう。カイザードは真っ赤な顔で抗議する。スティールは指を奥まで突っ込んだ。

「それじゃ罰ゲームにならないじゃないですか」

ここですよ、と指の先端で凝りを引っ掻く。

「っふぁっ!?」

不意を突かれたのか、カイザードは高い声を上げ、体を跳ね上げた。

「ほら、先輩も自分でやって」
「ぅ…無理っ、無理、だっ」
「大丈夫ですから、ほら、こっちも」

再度促しつつもう片方の手でカイザードの手を取ると乳首へと這わしていく。もう一つの敏感な性感帯を弄られ、カイザードの表情が官能に染まってきた。

「んっ…あぁっ…」

躊躇いがちな指もスティールの手と共に動かされていく内に感覚を呼び戻されてきたのだろう。徐々に動きが大胆になっていく。力が抜けてきた足が誘うように広がっていき、スティールは笑んだ。

「ふぅっ……ん、んっ…」

性感が強まるに連れ、カイザードは快楽を追うことに夢中になっている。控えめだった足の開きが奥を探りやすいように大きく開き、全く触れていない性器が頭を擡げている。
スティールは大丈夫そうだと判断し、己の指を抜き、一旦離れた。
カイザードはスティールが離れたことに気づかず、自然と指の数を増やして奥を探っている。気が強くプライド高い先輩が自慰に没頭する姿はスティールにとっても夢中になれる光景だった。

「先輩、こっち見てください」
「……んっ…な、んだ?」
「ほら、先輩の素敵な姿ですよ」

スティールが見せたのは大きめの手鏡だった。顔全体が完全に映る手鏡はカイザードが大きく足を開いて喘ぐ姿を完全に映し出し、自慰に没頭していたカイザードは絶句した。

「……っ、なに、見せるんだ、お前っ!!」
「これは賭けの罰ゲームでしょう?」

少し怒りを込めて告げるとカイザードはスティールの怒りに気づいたのか、目を細めた。

「…スティール?」
「俺は賭けが嫌いです」

カイザードは無理強いしたことを反省したのか軽く目を伏せた。

「……悪かった」

自慰で達くか入れられるかを選べと言われ、カイザードは入れられる方を選んだ。

「ん…んん…っ」

中途半端にしか勃っていないスティールの性器を口に含みつつ、カイザードは小さく腰を動かした。
奥まで慣らし、官能を大きく昂められた後なので焦らされているような状態なのだろう。四つんばいになった状態でスティールの性器を口に含んでいるカイザードの性器からはずっと先走りが零れ続けている。

「…っ。ふぁ……う…んんっ……」

慣れていないせいかあまり上手くはない。しかし必死の表情でフェラし続けるカイザードは十分色っぽく、スティールは満足だった。早く欲しいのか時折物欲しげな表情で見上げるカイザードにスティールは迷った。このままこの気の強い先輩に精液をかけたい気もする。けれど思い切り貫きたい気もする。カイザードは後者を望んでいるのだろう。十分昂ぶったスティールの性器を見つめる眼差しは物欲しげだ。

「このままかけていいですか?」

わざと意地悪く問うとカイザードは性器から口を外し、スティールを反射的に睨んだ。

「…おまえっ……」
反論しかけてカイザードは反論することがどういう意味を持つのか気づいたのだろう。悔しげに黙り込んだ。しかしスティールを睨む眼差しは逸らされない。強気の先輩らしいとスティールは思った。

「どうして欲しいですか?」

答えなければかけてやろう。素直に言われたらそのときは…と思いつつ問うとカイザードも気づいたのだろう。悔しげにスティールを睨み、ちらりと勃ちあがったスティールの性器を見つめ、顔を赤らめた。貫かれたときのことを思い出したのか軽く息を飲む。

「…欲しい……中に……」
「先輩。俺の目を見て言ってください」
「……このサド!」

恥ずかしいからスティールの顔を見たくないのだ。判っていて強制するスティールにカイザードは真っ赤になって怒った。

「先輩酷いなぁ……ね、出来るでしょう?おねだり…入れて欲しいときはどうするんでしたっけ?」
「……っ」

過去の経験からそうしなければ与えてもらえないことは知っているカイザードだ。時折物欲しげに腰が揺れているのは焦らされ続けていて辛いのだろう。
迷うように視線が彷徨い、カイザードは羞恥に目を閉じながら足を開いた。膝裏に手を入れるとスティールの前で大きく抱え上げる。奥まで丸見えになるこの体勢をカイザードは嫌っている。しかし過去何度も強制されたため、この体位をすると自然と官能が昂ぶるのだ。この後、確実に与えられるであろう強い快楽への期待に体の疼きが大きくなる。

「先輩、入れますよ」
「…っ、あ、あああっ…」

ようやく待ち望んだものを与えられ、カイザードの体は悦んでスティールの怒張を飲み込んだ。自慰でさんざん慣らされたカイザードの中は抵抗なく昂ぶりを受け止める。
絡みついてくる内部の熱い襞にスティールも快感を煽られ、目を細めて達しそうになるのを堪えた。

「…っ、先輩の中、凄く熱いです。すごく気持ちイイ…」
「…ぁああっ…スティール、俺、も、イイっ…」

カイザードは足をスティールの体に絡みつかせ、背にしがみついた。

「動けっ…奥まで、欲しいっ…」

また命令口調かと思いつつもどんな時も偉そうな態度がカイザードらしくもある。そんな強気なところも気に入っているスティールは素直に返事をした。

「はい、カイザード」

欲されているのは悪い気分じゃない。
スティールはカイザードが望むように奥まで強く突き上げた。



「もー、お前とは賭けなんかしない」

さんざん抱かれてぐったりしたカイザードはベッドに沈み込んでいる。強気な目元が泣いたせいで赤く腫れているのが何とも色っぽい。

「そうですか」

それはありがたいと思いつつ、スティールは別の可能性に気づいた。

「先輩、俺以外とは賭けをするつもりですか?」
「するかっ!俺は単にお前を抱きたくなったから賭けに誘っただけだ」

それもまた迷惑な話だとスティールは思った。けれどもまぁ、もうしないと言うのならとりあえずはいいだろう。

「先輩。俺を抱きたいならベッドで誘ってください」
「は?抱かせてくれるのか?」
「ベッドで勝負すればいいじゃないですか。先輩が俺を上手く感じさせてくれたら抱かれてあげますよ」
「いや止めておく」

案外あっさり諦めたカイザードにスティールは驚いた。

「先輩、そんなに自信ないんですか?」
「違うっ!考えてみりゃラーディンと比べられそうだしな。俺そういうのはちょっと抵抗あるんだよ。……自信がねえわけじゃねえぞ!」

ラーディンと比べられる?何をだ?と疑問に思ったスティールはふと気づいて眉を寄せた。まさか……だがあり得る。

「先輩、念のため言っておきますが、俺はラーディンを抱いてますからね」

抱かれている訳じゃないと主張しておくと案の定、カイザードは目を丸くした。何という誤解だ。だが考えてみれば確かに見た目にはスティールの方が抱かれているように見えるだろう。ラーディンは長身でさっぱりした好男子の容姿なのだ。

(けどな、先輩。自分を考えれば判るだろうに…)

カイザードとスティールでも見た目にはカイザードの方が抱いているように見えておかしくない。強気で腕の立つカイザードは大人しく抱かれているような性格ではないだろう。実際、最初はかなり強引に抱いたスティールである。

「………じゃいいか」
「何がです」
「いや。ラーディンがお前に抱かれてるならいいやって思って。なんか安心した」

拍子抜けしたと言いたげなカイザードにスティールはカイザードがラーディンに対抗心を燃やしていたのだろうかと気づいた。もしそんな対抗心でスティールを抱きたがっていたのならスティールにとってはいい迷惑だ。

(なんだかなぁ…)

けどまぁいいかとスティールはカイザードの横に寝転がり、そのままカイザードを抱きしめた。カイザードが納得してくれたのならそれでいいだろう。万が一また似たような状況になったらまたひっくり返せばいい。幸い相手の体のことは知り尽くしている。何とかなるだろう。

(それにドゥルーガもいるし…)

小竜という切り札がある限り、カイザードに抱かれることはないだろう。

「おい、あまり体、くっつけるな。もうしたくないんだから」
「抱いて寝るぐらいいいでしょう?」
「いや、だからその…煽られそうなんだよ!」
「そーですかー…」

眠りに落ちかけているスティールには抗議の声も子守歌状態である。

「こら、眠るな。少し離れてから寝ろって。おい、スティールっ」

結局そのまま眠りについたスティールであった。

<END>



Hなお仕置き話。
カイザードは乳首と内部が弱いというどうでもいいエロ設定があります…。